「腕を下げないように」——クロールでそう習うと、多くの人が水面ギリギリに腕を伸ばそうと必死になります。でも実は、それが腰落ちや肩のつらさの原因になっていることがあるんです。

コーチ、クロールで「入水したあとに腕を下げないように」と習ったので、水面ギリギリで前に伸ばすよう頑張っているんです。これで合っていますか…?

お、いいところに気づいたね。でもユウコさん、実は手を伸ばす位置は水面ギリギリじゃないんだよ。

えっ、そうなんですか…。下げてはいけないと思って、必死に水面へ向けて伸ばしていました。私、ずっと間違ってたんでしょうか。

間違いじゃないよ。その意識自体はすごく大事。ただ、ギリギリすぎると逆効果になるんだ。今日は理由までしっかり解説していくね。
まず前提の確認です。クロールでは、反対側の腕をリカバリーで前に戻し、指先が水面に着くくらいのタイミングでキャッチを始めるまで、前に伸ばした腕を下げずにグライドし続ける必要があります。

それができないと、どうなってしまうんですか?

腕が下がると、いくつも困ったことが起きるんだ。整理するとこうなるよ。
| 腕が下がると起きること | 中身 |
|---|---|
| ハイエルボーで掻けない | しっかり水をとらえられない |
| 水の抵抗になる | 下がった腕がブレーキに |
| 空回り | テンポだけ上がって腕をグルグル回すだけ |

じゃあやっぱり、下げないように水面ギリギリで頑張るのが正解なんじゃ…?

腕を下げないよう意識するのは正解。でもね、伸ばす位置が「水面ギリギリ」だと、また別の問題が出てくるんだ。

実際のトップ選手は、どうされているんでしょう…?私みたいなギリギリじゃないんですか。

いい質問。これを見てみよう。アメリカのトップスイマー、ネイサン・エイドリアン選手のクロールの水中映像のスクリーンショットなんだ。
ネイサン・エイドリアン(Nathan Adrian、1988年12月7日 – )は、ワシントン州ブレマートン出身のアメリカ合衆国の競泳選手。オリンピックと世界水泳選手権の金メダリストです(Wikipedia)。

この映像を見ると、入水後の腕の位置は水面ギリギリじゃなくて、脇の延長線上に伸ばしているのがよく分かるよね。

本当ですね…思ったより深いところに伸びています。私、全然違う場所に伸ばしていました。

正しい腕の位置は水面下20cmくらいと言われているんだ。目安は、肩より肘、肘より手のひらが少し下になるくらいの位置だよ。
まず結論|入水後の腕は水面ギリギリで伸ばさない
- 入水後の腕は水面ギリギリではなく少し深めに伸ばす → 水面下20cmが目安
- 腕が下がるとハイエルボーで掻けず抵抗になる → 深すぎもNG
- キャッチまでグライドを保つ → 伸びを切らさない
「少し深め」を意識するだけで、腰落ちや抵抗が解消することがあります。

水面下20cm…なるほど。でも、どうして水面ギリギリだといけないんでしょう。理由が分からないと、また元に戻ってしまいそうで。

うん、理由を知っておくのは大事だね。三つあるから、一つずつ説明するよ。
一つ目は体重を前に乗せられないこと。水面ギリギリに伸ばすと腕が下がる心配は減りますが、指先が水面に上がることで体が少し起き上がる姿勢になり、体重を前に乗せられなくなります。

ユウコさん、走るときに体を後ろに傾けてスピード出せる?

いいえ、無理ですね。むしろ前のめりになってしまいます。

そう、気持ちよく前に進むには前傾姿勢が必要なんだ。水泳も同じで、体重を前に乗せられる姿勢が大事なんだよ。
二つ目は腰落ちの原因になること。水面ギリギリで腕を伸ばす姿勢は後ろに体重がかかりやすく、下半身が下がりやすくなってしまいます。

私、まさに下半身が沈むのが悩みなんです…。人より沈んでる気がして、いつも気にしていて。

それなら朗報だよ。入水後の腕の位置を直すだけで、腰落ちが解消する可能性があるんだ。一度試してみる価値はあるね。
三つ目は肩が楽になること。今まで腕が下がらないよう水面ギリギリに伸ばしていた人は、その姿勢をキープするのがつらかったはずです。

はい、肩がパンパンになっていました…。私、体が硬いからだと思って諦めていたんです。

だよね。肩の筋肉で腕を持ち上げ続けるうえに、ローリングで体が沈むのに肩から先を水面へ向けて伸ばすわけだから、かなりの肩関節の柔軟性が必要なんだ。

じゃあ、20cmに伸ばすと違うんですか?

水面下20cmに伸ばせば、無理に腕を持ち上げる必要がなくなって肩が楽になるよ。柔軟性のせいじゃなかったんだ。

なるほど、楽なのに正しい姿勢になるなら一石二鳥ですね。それなら私にもできそうです。
ここで一つ補足です。目的によって、目安の深さは少し変わります。
| タイプ | 入水位置の目安 | ねらい |
|---|---|---|
| 基本・まず身につける | 水面下20cm | 前傾・腰落ち・肩の負担を解消 |
| 50m得意な短距離スイマー | 水面下30cmでもOK | 素早いキャッチが可能に |

それでは私も、いっそ30cmにしてしまおうかな…?そのほうが速くなれそうですし。

ちょっと待った。これには高い技術が必要なんだ。素早い動きでも正確に水をキャッチするには、神経系のトレーニングなんかも併せてやる必要がある。

焦らなくて大丈夫。まずは20cmからしっかり身につけよう。それが一番の近道だよ。

まとめ

よく分かりました。水面ギリギリではなく水面下20cm。前傾も腰落ちも肩のラクさも、全部つながっていたんですね。さっそく試してみます。

その意気だよ。ちょっとした腕の位置の違いで泳ぎは大きく変わるからね。一緒に磨いていこう。
映像で正しい姿勢で泳げているかどうか確認したい方や、正しい腕の位置を身につけたい方は、専門のコーチに一度見てもらうのがおすすめです。



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