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後半で失速するスイマーへ:スレッショルド(閾値)トレーニングで持久力を底上げする

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「200mや400mを泳ぐと、後半でガクッとペースが落ちてしまう」
「セット練習の最後の1本がどうしても粘れない」

こうした悩みを抱えているスイマーの方は多いのではないでしょうか。僕がこれまで多くのスイマーを見てきて感じるのは、後半失速の壁を越える鍵は「スレッショルド(閾値)」と呼ばれる強度ゾーンの持久力にあるということです。

この記事では、スレッショルドトレーニングの意味から、強度の決め方・サークルの組み方・週何回くらいが目安かまで、現場で取り組む側の視点でお話ししていきます。

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スレッショルド(閾値)とは何か

スレッショルド(Threshold)は、英和辞典で引くと「敷居」「入口」「閾(いき)」といった意味が出てきます。水泳の文脈では、この最後の「閾値」の意味で使われることがほとんどです。

では何の閾値かというと、乳酸が血中に急激に溜まり始める一歩手前のラインのことです。一般的には「乳酸性作業閾値」「LT」「OBLA」などと呼ばれ、おおむね血中乳酸濃度が4mmol/L付近に達する強度が目安とされています。

感覚的に言い換えると、

「これ以上ペースを上げると一気にきつくなる。今のペースなら何とか粘れる」

という、ちょうどそのギリギリの強度です。スピードでいえば1500m〜3000mのレースペース付近、心拍数でいえば最大心拍数の85〜90%あたり(個人差あり)が目安になります。

スレッショルドの考え方は、別記事のOBLA(乳酸性作業閾値)の解説記事でもう少し踏み込んで説明していますので、生理学的な背景まで知りたい方はあわせて読んでみてください。

スレッショルドトレーニングで何が変わるのか

この強度でしっかり泳ぎ込めるようになると、レースや練習の後半に効いてくる持久力が育ちます。具体的には次のような変化が出てきます。

・有酸素能力(酸素を取り込んで使う力)が底上げされる
・乳酸を処理する能力が高まり、後半でも動きが鈍くなりにくい
・速いペースを「ラクに感じる」ゾーンが広がる
・全身の毛細血管が増え、回復力も上がる

マスターズスイマーであれば、200mや400mで後半に粘れるようになる感覚をつかみやすくなりますし、中高生スイマーであれば、メイン練習のセット後半で落ちなくなる土台が作れます。

スピードを上げるためのトレーニングではなく、「持っているスピードを最後まで保つためのトレーニング」と考えると、位置づけがすっきりします。

スレッショルドの強度の見つけ方

主観的な目安(RPE・体感)

もっとも手軽なのは体感で見つける方法です。「会話するのは無理だけど、フォームを保ったまま同じペースで20〜30分粘れそう」というラインがおおよその閾値です。1本ずつタイムが落ちていくならオーバーペース、ラクすぎて呼吸も整っているなら強度不足、と判断します。

心拍数の目安

もう少し客観的に追い込みたい方は、心拍数を目安にすると安定します。スレッショルド域の心拍数はおおむね、

・最大心拍数の 85〜90%
・カルボーネン法(予備心拍を使う計算)で 強度75〜85%

あたりを目安にすると、おおよそのスレッショルド域に入ります。最近は防水仕様で水中でも心拍が拾えるスマートウォッチが増えてきたので、感覚と数字をすり合わせるとブレが減ります。気になる方は練習道具の特集ページもあわせてのぞいてみてください。

泳力テストでの目安

選手や本格派マスターズの方であれば、20分間で泳ぎ切れる距離(T20テスト)の平均ペースをスレッショルドの目安にする方法もあります。たとえばクロールで20分1500m泳げる方なら、100mあたり1分20秒前後がスレッショルドペースの目安、というイメージです。

サークルの組み方と距離設定の例

スレッショルド持久力のメニューを組むときのコツは、「同じスピードを保てるギリギリのペースで、休憩は短め」です。本数を重ねるごとにタイムが落ちていくならペースを少し落とす、というのが大原則です。

休憩時間は基礎持久力(EN1)よりも少し短めに設定するのがポイントです。距離別の目安としては次のあたりが取り組みやすいと思います。

・100m × 8〜10本/レスト10〜15秒
・200m × 5〜8本/レスト15〜20秒
・400m × 3〜5本/レスト20〜30秒
・800m × 2〜3本/レスト30秒程度

マスターズスイマーや一般のスイマーの場合、いきなり200m以上を繰り返すのは厳しいので、50mや100mの短い距離を多めの本数で組み、慣れてきたら距離を伸ばす流れがおすすめです。

細かく区切るのが苦手な方は、500mや800mを「ペースを保ったまま1本」で泳ぎ切るスタイルもひとつの方法です。同じ強度で長く泳げると、メンタル面でも自信がつきやすくなります。

週に何回・1回どれくらいが目安?

スレッショルドトレーニングは強度が高めなので、毎日入れるとオーバーワーク気味になりやすいです。一般的な目安としては、

・選手・本格派マスターズ:週2〜3回/1回20〜40分のメイン
・一般マスターズ・社会人スイマー:週1〜2回/1回10〜20分のメイン
・週1回しかプールに入れない方:その回のメインの一部に組み込む

あたりを目安にすると、回復とのバランスが取りやすいです。スレッショルドの日と、楽に泳ぐ基礎持久力(EN1)中心の日を交互に配置すると、疲労が抜けやすく長続きします。

マスターズ・中高生スイマー向けの段階的な取り入れ方

マスターズスイマーの場合

マスターズの方は、まずは基礎持久力(EN1)でベースを作ったうえで、メインに50〜100mのスレッショルドを少量入れるところから始めるのが安全です。

例:
・W-up:400m DPSやFormで体を起こす
・Pre-main:100m×4 EN1(楽め)
・Main:100m × 6本/レスト15秒(スレッショルド)
・Down:200m Easy

「今日は最後まで同じペースで泳げた」という日が続くようなら、本数や距離を少しずつ伸ばしていきます。逆に、最後の1本が大きく落ちる日が続くようなら、本数を減らすか強度をひと段階下げる、という調整がよさそうです。

中高生スイマーの場合

中高生スイマーの場合、コーチが組んだメニューには必ず狙いがあります。チーム練習のメインがスレッショルド系のセットだと感じたときに、「これは閾値ゾーンの持久力を上げる練習なんだ」と意識して取り組むだけでも、効きがかなり変わってきます。

同じ200m×10本というメニューでも、「とにかく速く回す」のではなく「最後まで同じタイムで回り切ることを最優先にする」と決めて入ると、得られる効果がスレッショルド寄りに揃ってきます。

自主練の時間が取れる方は、チーム練のオフ日に短めのスレッショルドセット(100m×6〜8本など)を1回だけ入れる、という補強の使い方もひとつの方法です。やりすぎは故障や成長の妨げにつながるので、量より「狙ったゾーンで揃える」意識を大事にしてみてください。

スレッショルドに取り組むときの注意点

最後に、現場でよく見かける「もったいない取り組み方」を3つだけお伝えします。

① 強度を上げすぎる
本数を重ねるたびにタイムが大きく落ちていく場合、それはスレッショルドではなくAT〜VO2max寄りの練習になっています。狙いがズレるので、ペースを5〜10秒落として「同じペースで揃える」ことを優先してみてください。

② 休憩を長く取りすぎる
レストが長すぎると、息が完全に整って心拍も下がりきってしまい、スプリント的な練習になってしまいます。スレッショルドでは「呼吸が完全には整わないうちに次へ」という短めのレスト感が大事です。

③ フォームが崩れたまま続ける
強度が上がるとフォームが乱れがちです。フォームが崩れた状態で続けると、効率の悪い泳ぎ方を体に染み込ませてしまうので、崩れてきたと感じたら本数を切り上げるのもひとつの判断です。

個別の相談が必要な方へ

「自分の今の泳力でスレッショルドペースがどのあたりか知りたい」
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