
コーチ、バタフライは昔からとにかく体力勝負だと思ってるんですよ。25mで息が上がるのは、要は鍛え方が足りないだけでしょう。

シゲさん、その思い込み、今日でひっくり返しますね。体力じゃなくて、コツなんですよ。
バタフライは技術的にはそれほど難しい種目ではありません。ただし4泳法の中で最もエネルギーを消費するのは事実です。だから「泳ぐのが苦手」という方が少なくないんですね。
けれど、疲れる原因を「体力不足」だと決めつけてしまうと、練習の方向を間違えます。同じ体力でもコツさえつかめば、グッと長く泳げるようになるんです。

コツ、ですか。私はずっと、一生懸命かいて進むのが正解だと信じてきたんですけどね。

まさにそこが落とし穴なんです。まず結論をお見せしますね。
まず結論|長く楽に泳ぐ「3つのコツ」
- 入水後にグライドしてストローク数を減らす
- 大きめのうねりを意識する
- キックのタイミングを変える(第2キックと手かきを合わせてテンポを落とす)
「うねりとグライドで進み、力は最小限」が、長く泳ぐ秘訣です。

力は最小限…! 一生懸命かいてたのが、逆効果だったってことですか。

そこに気づけたら大きいですよ。ひとつずつ崩していきましょう。
まずはグライドです。通常のバタフライは、うねりを最小限に抑えてある程度テンポよく泳ぐので、手の入水後に長くグライドすることはあまりしません。

つまり長く泳ぐときは、あえてグライドを長く取る、ということですね。

そうです。ただ理由が面白くて、ここは昔の感覚だと勘違いしやすいんですよ。
バタフライは手のリカバリーで上半身のほとんどを水上に出します。そのため、一定の速度より遅く手を回すと沈むスピードが速くなるんです。だから手を回すスピードは、クロールのように遅くはできません。

ほう…! 手は速く、でも回数は減らしたい、という話なんですね。

その通り。入水後にしっかりグライドすればストローク数が減って、体力を温存できるんです。
次はうねりです。速く泳ぐには大きなうねりは邪魔になりますが、長く楽に泳ぐにはむしろ有効なんです。

大きいうねりって、具体的にはどう作るんですか。私は勢いで体を反らせてたんですが。

反らすんじゃなくて、乗せるんです。手の入水時にあごを引いて、前に体重を乗せてください。
入水ポイントが少し深くなるように潜り込んで、大きめのうねりを意識します。反りではなく、前へ体重を移す感覚がポイントです。

あごを引いて、深く潜り込む。長年の我流を捨てて、やってみますよ。

その素直さが上達の近道ですよ。では3つ目、キックのタイミングです。
バタフライのキックは、第1キックを手の入水時に、第2キックをプッシュに合わせて打つのが普通です。長く楽に泳ぎたいなら、この第2キックを打つタイミングを変えます。

どう変えるんですか。私が習った頃は、タイミングをいじるなんて発想もなかったですよ。

本来は第1キックの後すぐ手をかき始めますよね。そこにグライドを一枚挟むんです。
第1キックの後にしっかりグライドして、その後に第2キックを打つと同時に手をかき始める。こうするとストロークテンポがゆっくりになって、長く泳げるようになります。順番を並べて比べてみましょう。
| 泳ぎ方 | 動作の順番 |
|---|---|
| 通常のバタフライ | 第1キック → 手をかく → 第2キック |
| 楽に長く泳ぐバタフライ | 第1キック → グライド → 第2キック → 手をかく |

グライドが間に入る分だけ、ゆっくりになる。順番を入れ替えるだけなんですね。

そう、ほんの一手間です。ここからは、この感覚を体に入れる練習を2つ紹介しますね。
1つ目はグライドを意識する練習で、代表的なのが「4キック1ストローク」です。グライド姿勢をキープしたまま4回キックを行い、4回目のキックと同時に手をかきます。手をかいた後は入水と同時に第1キックを打ち、グライド姿勢を保ってしっかり伸びてから第2キックを打ちます。
| 4キック1ストロークの流れ | |
|---|---|
| ① | 第1キック |
| ② | 体重を乗せてしっかり伸びる(姿勢意識) |
| ③ | 第2キック → 第3キック → 第4キック |
| ④ | 手をかく |

伸びる時間をたっぷり取る感覚を、体に覚えさせるわけですね。昔はここを我慢できなかった。

その我慢が要なんですよ。2つ目は、手と足のタイミングを意識する「片手」ドリルです。
オーソドックスなドリルですが、タイミングを掴むには有効です。2回キックを連続で打ち、2回目のキックに合わせて手をかきます。手の入水と同時に第1キックを打った後は、しっかりグライドしましょう。

片手に慣れたら、次はどうすればいいんですか。

右手を数回、次に左手を数回、あるいは片手と両手を交互に。少しずつ通常のバタフライへ移していけばいいですよ。
ここで大事な注意があります。今回の泳法は、あくまでエネルギー消費を抑えて長く泳ぐためのものです。体力に自信がない方が目標の距離を完泳したい時には有効ですが、大会でベストタイムを更新したい人には有効とは言えません。

なるほど。目的によって使い分けるんですね。速さと長さは別物、と。

その理解でバッチリです。速いタイムを狙う人は、体力をつけて従来のバタフライを磨きましょうね。
長く泳ごうとして「やりがちなNG」
最後に注意点です。楽に長く泳ごうとするほど、かえって沈んだり苦しくなったりする人がいます。次のNGに心当たりがないかチェックしてください。
| やりがちなNG | なぜダメか/直し方 |
|---|---|
| グライドを長く取りすぎる | 伸びすぎると失速して沈み、次の入水が苦しくなる。「気持ち長め」で十分 |
| 呼吸であごが上がる | 前を見て息を吸うと腰が落ちる。視線は前下方、おでこから前に出す意識で |
| キック頼りで手が遅れる | キックで進もうとするほど消耗が早い。第2キックと手のかきを合わせる |

いやー、私、グライドを長く取りすぎていたかもしれませんね…! 我流の悪い癖が全部当てはまってますよ。

気づけたら、もう直ったも同然です。合言葉はこれ。
「うねりとグライドで進み、力は最小限」。この感覚を保てると、同じ体力でも泳げる距離がぐっと伸びます。

ありがとうございます、コーチ。長年の思い込みを捨てて、さっそくプールで試してきますよ。

いってらっしゃい。バタフライを25m完泳したい方は、キックの記事も合わせて見てみてくださいね。



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