「たくさん泳いだから疲れた」——そう思っていませんか。でも実は、プルで腕が痛くなるのは体力不足とは限りません。使っている筋肉が間違っているサインかもしれないのです。

コーチ、プルの練習をいっぱいやると腕がすぐ疲れて痛くなるんです。これって体力がないだけですか…?

どこが疲れる?もしかして力こぶのあたり、上腕二頭筋じゃないかな。

まさにそこです!なんで分かったんですか!?
水泳は水の抵抗を利用して進むスポーツで、推進力の多くはプル(手のかき)で得ています。楽に泳ぐのも速く泳ぐのも、プルが上手いかどうかで大きく変わるのです。

実はね、プルが上手い人と下手な人って、泳いでる時に使ってる筋肉が違うんだよ。

じゃあその筋肉の使い方、今すぐ知りたいです!一気に速くなりたくて。

気持ちはわかるよ。でも順番が大事だから、今日は使うべき筋肉を一つずつ整理していこう。
まず結論|プルで使うべき3つの筋肉
焦って腕だけで掻いても速くはなりません。プルが上手い人と下手な人の違いは、次の3つに集約されます。
- プルが下手な人は上腕二頭筋しか使えていない
- 肘を伸ばして押すには上腕三頭筋
- 広背筋が使えると推進力が加速
腕だけで掻くのをやめて、三頭筋と広背筋を使うのが速さの分かれ目です。

腕の力こぶだけじゃないんですね。てっきり腕の力だと思ってました。

そうなんだ。ここからひとつずつ、詳しく見ていこう。

下手な人は上腕二頭筋しか使えていない
大人の方を指導していると、プルの練習後に「いっぱい泳いだから腕が疲れて痛くなった」という声をよく聞きます。どこが疲れたか聞くと、上腕二頭筋——力こぶを作った時に力が入る部分に疲れを感じている人が結構いるのです。

まさに僕がそれです。二頭筋がパンパンで。

筋肉は縮まることで力を出す。水をキャッチするには肘を曲げて二頭筋を縮めるから、確かに使うんだ。

でもね、その後の肘を伸ばしていく動作では、二頭筋は使わないんだよ。

なのに二頭筋ばかり疲れるってことは…?

キャッチで力を入れた姿勢のまま肘を固定して、最後まで水を押しちゃってる可能性があるんだ。

肘を伸ばして押すのに必要な上腕三頭筋
プルが上手い人は、水をかいている時の腕の位置によって使う筋肉が変わっていきます。キャッチでは肘を曲げるので上腕二頭筋。でも肩を超えたあたりから肘を伸ばして水を押すので、メインは上腕三頭筋に変わっていくのです。

上腕三頭筋って、どこですか?

二頭筋の裏側、いわゆる二の腕やふりそでって呼ばれる部分だよ。

ここに全く疲れを感じないなら、プルの半分は推進力になっていない可能性があるんだ。

半分も!?もったいなさすぎる…僕、損してたんですね。
腕の位置と使う筋肉の関係を整理すると、こうなります。
| プルの局面 | 肘の動き | メインで使う筋肉 |
|---|---|---|
| キャッチ | 肘を曲げる | 上腕二頭筋 |
| プッシュ(肩から後半) | 肘を伸ばす | 上腕三頭筋・広背筋 |

広背筋が使えれば推進力がさらに加速
プルに必要な筋肉というと腕だけをイメージしがちですが、大きな推進力を得るには広背筋も使えるようになる必要があります。背中の骨と腕の骨をつなぐ大きな筋肉で、腕を伸ばした状態から引き付けてくる動作に最も必要な筋肉です。

広背筋って、背中の筋肉ですよね。

そう。水泳選手が逆三角形体型って言われるのは、広背筋の使用頻度が高くて普通の人より発達して、脇の下に張り出してるからなんだ。

あの体型、広背筋だったんですね!

この広背筋が使えると脇のあたりが収縮して、プッシュで脇が締まる。今までより力強く、最後までしっかり水を押せるようになるんだ。
逆に広背筋が使えないままプルをすると、プッシュで脇が開いて肘から先が外に抜けてしまう。すると上腕三頭筋も十分使えず、プッシュも甘くなってしまいます。

全部つながってるんですね…順番を飛ばしちゃダメだ。

そう気づけたのが大きいよ。しっかりプルができれば、二頭筋より三頭筋や広背筋、つまり二の腕からわきの下後方に疲れを感じるようになる。

まずは上腕二頭筋ばかり使うプルからの卒業を目指そう。広背筋で水をかく感覚がつかめれば、プルは大きな推進力を発揮できるようになるよ。

広背筋で水をかく感覚、つかみたいです!何か良い練習はありますか?

広背筋を使ってしっかり水をかく感覚を養うには、ハンドパドルを使った練習もひとつの方法だよ。種類や選び方はハンドパドル(Aパドル)の解説ページも見てみてね。
焦って腕だけで掻くより、三頭筋と広背筋を目覚めさせる。それが「腕だけプル」からの卒業への近道です。



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