

コーチ、弟のことで相談です。中学からずっと水泳やってるんですけど、最近タイムが頭打ちで、本人めちゃくちゃ落ち込んでて。

相談してくれてありがとう。実はそれ、中高生スイマー本人や保護者の方から本当によく聞くお悩みなんだ。

部活と学校の両立で疲れてるし、成長期で体も変わってるからか、思うように泳げないみたいで。とりあえず「頑張れ」って言えばいいですか?

タクミさん、いい質問だけど、そこはちょっと待ってほしいな。今どき「頑張れ」の一言は、逆効果になることもあるんだ。

えっ、そうなんですか。じゃあ何て言えば…。
タクミさんはすぐに答えを求めて前のめりになりがちです。でも中高生期は、焦って一気に解決しようとするほど空回りしやすい時期。よしのりコーチは、まず全体像から整理していきます。
まず結論|中高生は結果より「土台」を強くする時期
中高生期(おおよそ12〜18歳)は、競泳人生の中でも体が一気に変わる時期。同時に部活・クラブ・学校・進路と、いくつもの選択を一度に迫られます。小学生とも大人とも違う、独特の難しさがある時期なんです。
- 中高生は体が一気に変わる時期(タイムの停滞は当たり前)
- タイムより成長を優先・練習量の過剰に注意
- 栄養・休養・進路バランス・親子の対話が鍵
今を健全に過ごすことが、その後の長い水泳人生の質を決めます。

「タイムの停滞は当たり前」って言葉、ちょっと安心しました。

そう、まずそこを知ってほしかったんだ。ここから、この時期に大切な5つの考え方を一緒に見ていこう。
まず土台として、中高生期(おおよそ12〜18歳)は第二次性徴期と呼ばれる、体が大きく変化する時期です。男子は12〜15歳、女子は11〜13歳ごろに身長急増期(成長スパート)を迎えます。

うちの弟、まさに今ぐんぐん背が伸びてる真っ最中です。じゃあタイムが出ないのも無理ないってこと?

まさにその時期だね。この時期の体って、こんなに変わるんだよ。
| この時期の変化 | 体に起きること |
|---|---|
| 身長が急に伸びる | 月単位で体の感覚が変わる |
| 骨と筋肉の成長差 | 柔軟性が一時的に落ちる |
| 体重・体型が変わる | 浮き方や水の感覚が変わる |
| ホルモン変動 | 精神的にも揺れやすい |
| 故障リスク上昇 | 成長板の負担が大きい |

こんなに変わってたら、そりゃ以前のタイム出ないですね…。

大事なのはここ。これを「不調」じゃなく「成長期の一時的な変化」だと理解すること。それだけで不安がぐっと軽くなるんだ。
考え方①②|成長を優先し、練習量の過剰を防ぐ
身長急増期は特に注意が必要です。骨が伸びるスピードに筋肉や腱が追いつかず、急に量を増やすと故障リスクが一気に上がる。この時期によく見られる故障はこうしたものです。
- 水泳肩(スイマーズショルダー):急な伸長で肩関節への負担増
- 腰痛:腰椎分離症・椎間板ヘルニアのリスク
- 膝痛:成長板への負担(特に平泳ぎ)
- シンスプリント(脛の痛み):陸トレでの過負荷

故障したら、しばらく泳げなくなっちゃいますよね。だったら今のうちに一気に鍛えて…あ、それがダメなのか。

タクミさん、気持ちはわかるけど、そこで飛ばすのが一番危ないんだ。故障すると回復に数週間〜数ヶ月かかることも珍しくないよ。

うっ…。せっかくの時間が丸ごと消えちゃうってことか。

そう。だからこの時期は「積む」より「守る」。持ってほしい考え方はこの4つだよ。
- タイムが伸び悩んでも焦らない(体が変化中だから当たり前)
- 故障の小さなサイン(違和感・痛み)を見逃さない
- 急な量増は避ける(コーチに相談しながら段階的に)
- ストレッチと柔軟性維持を意識的に(成長期は硬くなりやすい)
もうひとつ、中高生スイマーで多いのが、学校の部活+スイミングクラブ+自主練を全部こなして、知らないうちに練習量が過剰になっているパターンです。次のサインが複数出ていたら要注意。
| 過剰トレーニングのサイン | 対策 |
|---|---|
| 朝起きるのが辛い日が続く | 週にオフ日を最低1〜2日確保 |
| 食欲が落ちる・体重が減り続ける | 食事と睡眠の量を増やす(回復への投資) |
| 練習中の集中力が落ちる | 「全部やる」を見直し優先順位を整理 |
| タイムが下がり続ける | 朝の体重・体感を記録し早期発見 |
| 気分の落ち込み・イライラが増える | 必要なら休養期間を作る勇気を持つ |

あ…最近イライラしやすいって母が言ってました。当てはまってるかも。

複数出ているなら、練習量が回復力を超えているサインかもしれない。本人は「弱音を吐けない」で頑張りすぎることがあるからね。表情や体重の変化を見てあげて。
考え方③④⑤|栄養・休養・進路・対話を整える
故障を防いで健全に成長するには、栄養と休養が練習と同じくらい重要です。意識的に摂りたい栄養素はこちら。
| 栄養素 | 摂りたい理由・食材 |
|---|---|
| タンパク質(体重1kgあたり1.5〜2g目安) | 肉・魚・卵・大豆・乳製品 |
| カルシウム | 牛乳・小魚・チーズ(骨形成に必須) |
| ビタミンD | 鮭・きのこ・卵黄(カルシウム吸収を助ける) |
| 鉄分 | 赤身肉・魚・葉物野菜(特に女子は意識を) |
| 炭水化物 | 練習量に合わせて十分に |

けっこういろいろあるんですね。食事って大事なんだ。

すごく大事だよ。特に女子で月経が始まっている場合は、鉄分不足によるパフォーマンス低下に注意してほしい。
さらに、女子中高生で月経が止まる、3食しっかり食べているのに体重が増えないなどの症状がある場合は「女性アスリートの三主徴」を必ず確認を。将来的な健康に関わるので、早めに専門家に相談してください。
休養も同じくらい大切です。ポイントはこの3つ。睡眠は8時間以上(成長ホルモンは眠り始めの深い睡眠で多く出る)、就寝時間を一定に(週末も大きくずらさない)、練習がない日はスマホ・ゲームより体を休める選択を。

弟、夜遅くまでスマホいじってます…。睡眠が成長に関わるって知らなかった。

ここが逆転の発想でね。「練習量を増やす」より「回復を早く完了させる」ほうが、結果的に成長を促すんだ。それを伝えてあげるといいよ。

なるほど…。あと進路も気になります。受験のとき水泳どうするか、絶対もめそうで。

一番もったいないのは、無理に両立させて両方が中途半端になるパターンなんだ。だから選択肢を先に持っておこう。
- 本人の希望を最優先に(続けたいか・どこまでやりたいか)
- 水泳推薦・スポーツ推薦の選択肢を早めにリサーチ
- 水泳と学業の両立校も含めて進路の幅を持たせる
- 受験直前期は思い切って休止も(数ヶ月休んでも復帰は十分可能)
- 大学・社会人で再開できるのが水泳の強み(マスターズという受け皿あり)

焦って全部いま決めなくていいんですね。ちょっと肩の力が抜けました。

そうそう。水泳は長く続けられるスポーツだから、中高生期の数年で全てを決める必要はないんだ。
最後の鍵が親子のコミュニケーション。思春期と重なって難しくなる時期ですが、伸び悩みや故障の原因が「言葉にできない悩み」だった、というケースは少なくありません。保護者の方は、まず聞き方を変えてみてください。
| 避けたい声かけ | おすすめの声かけ |
|---|---|
| 「タイムどうだった?」 | 「今日の練習で何を意識した?」 |
| 「ちゃんと練習した?」 | 「楽しめた?」 |
| 「もっと頑張れ」 | 「無理しないでね」 |
| 他の子と比較する | プロセス(過程)を見て認める |

うわ、つい「タイムどうだった?」って毎回聞いてました…。気をつけます。

気づけたなら大丈夫。そして本人にも伝えてあげて。伸び悩んで辛いときは、ひとりで抱え込まないでって。
本人へのおすすめは、コーチに相談する、保護者に話す(言葉にしないと伝わらない)、友達と気持ちを共有する、必要なら一旦休む選択もOK。「水泳を続けたい」気持ちと「今は辛い」気持ちは両立します。両方を大事にしていいんです。
よくあるご質問

最後に何個か気になることが。急に伸び悩んだのって、フォームが悪いせいですか?

第二次性徴期に入ってからの伸び悩みは、フォームより体が変化中の一時的な現象であることが多いんだ。背が伸びた・体重が変わったで水中の感覚がずれる。焦らず、体が安定するのを待とう。

高校受験で一旦やめたら、もう速くは戻れないですか?

そんなことはないよ。半年〜1年休んでも、体が成長期にあれば再開後にむしろ伸びるケースもあるんだ。本人が望むなら休止は十分アリだよ。

じゃあ最後に。故障を繰り返す場合は、続けるべきですか?

それはまず整形外科やスポーツドクターで正確な診断を受けてほしい。原因を放置して続けると慢性化するからね。診断のうえで練習・休養・栄養を見直して再発防止プランを立てよう。
まとめ|中高生期は「土台を強くする時期」
- ① 第二次性徴期はタイムより成長を優先
- ② 部活+クラブの練習量過剰に注意
- ③ 故障予防は栄養と休養が鍵
- ④ 進路選択は本人の希望を最優先に
- ⑤ 親子のコミュニケーションが解決の鍵
中高生期は「結果を出す時期」ではなく「土台を強くする時期」。今を健全に過ごすことが、その後の長い水泳人生の質を決めます。

よく分かりました。一気に速くさせようとしてたけど、まずは弟とゆっくり付き合っていきます。ありがとうございました!

その姿勢が一番だよ。焦らず、長い目で見守ってあげてね。



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