「知って楽しい水泳こぼれ話」、第10回です。今回は、ロンドンの建物と建物の間に架けられた透明な「Sky Pool」を見ていきます。
先に結論
Sky Poolは全長25mですが、空中を橋のように渡る透明アクリル部分は15mです。地上約35m、建物の10階部分で、泳ぐ人からも地上からも水の中が見える構造になっています。
ロンドンの建物をつなぐ25mプール
Sky Poolがあるのは、ロンドン南部ナイン・エルムズの複合開発「Embassy Gardens」です。向かい合う2棟の建物の10階部分をプールでつなぐ計画として、2021年に開業しました。
「25mすべてが透明な橋」というわけではありません。設計元によると、建物間をまたぐ透明アクリル部分が15m、その両端に建物上の5m部分があり、全長25mになります。
数字で見るSky Pool
- 地上からの高さ:約35m
- プール全長:25m
- 建物間の透明アクリル部分:15m
- 水深:約1.2m
- 水量:約14万8,000L
- アクリル側壁:約180mm、底面:約360mm
透明なだけではない構造上の工夫
難しいのは、水の重さを支えることだけではありません。高層建物は風や基礎の変化によって、それぞれわずかに動きます。プールを両方の建物へ完全に固定すると、その動きを受け止めきれません。
そこでSky Poolは、橋に使われる支承の考え方を取り入れ、建物の動きに合わせて端部が動ける構造になっています。透明部分の側壁は、水圧を受けながら15mを渡す深い梁としても働きます。
「全部アクリル」ではない
透明部分の床は7枚の鋳造アクリルを接合して作られています。一方、両端の建物上に載る部分はステンレス製の構造です。見た目は一続きの透明なプールですが、透明性と構造、安全な維持管理を両立させるために材料を使い分けています。
泳ぐ場所というより、建築そのものが主役
競泳用プールのような水深やコース設備を備えた練習施設ではありません。面白さは、35m下の景色を見ながら泳ぎ、地上からは人が空中を泳ぐように見えることです。一般の観光用プールではなく、Embassy Gardensの施設として運用されています。
SNS映えだけで終わらず、アクリル製造、接合、建物の動きへの対応まで含めた大規模なエンジニアリング事例になっている点が、Sky Poolの本当の見どころです。
まとめ
Sky Poolは、地上約35mにある全長25mのプールです。空中を渡る15mの透明アクリル部分と、建物上の端部を組み合わせ、見た目の軽さとは反対に水と構造物の大きな荷重を支えています。「透明なプール」という一言の裏に、橋と水槽の技術が詰まった施設でした。
「知って楽しい水泳こぼれ話」過去回
- 100年以上前、競泳の五輪はセーヌ川で行われていた話(第1回)
- 世界一深い60mプール「Deep Dive Dubai」── 水中に沈没都市がある話(第2回)
- 水温5℃以下の世界選手権「アイススイミング」の話(第3回)
- 沼の中を泳ぐ「ボグ・スノーケリング世界選手権」の話(第4回)
- イアン・ソープが代表選考会でスタート台から落ちた話(第5回)
- 日本水泳連盟が今も公認している「日本泳法」13流派の話(第6回)
- トンガでザトウクジラと一緒に泳げる話(第7回)
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