
平泳ぎのスタートとターン直後だけに許される、水中で一回だけ大きく動く「ひとかきひとけり」。たった一回の動作ですが、レースのなかで前半の距離を一番稼げるポイントでもあります。
「思ったより進まない」「いつ浮き上がればいいのか分からない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。僕がこれまで多くのスイマーを見てきた経験からも、ひとかきひとけりは平泳ぎのなかで一番もったいない使い方をされている動作のひとつです。
この記事では、ひとかきひとけりがどんな動作なのか、ルール上の決まり、推進力を上げるコツ、練習の組み立て方を順に整理していきます。
ひとかきひとけりとは ― スタート・ターン後の限定動作
「ひとかきひとけり」とは、平泳ぎのスタート直後とターン直後の水中で一回だけ許される大きな動作のことです。普段の平泳ぎでは、手を太ももまで引ききるような大きなプルはルール違反になりますが、スタートとターン後だけは特別に認められています。
順番としては、壁を蹴って水中でストリームラインを作り、ドルフィンキックを一回、続いて手のひとかき(プル)、最後にひとけり(平泳ぎキック)、という流れです。この一連の動作を終えてから水面に浮き上がります。
World Aquaticsルール上の決まり
ルール面で押さえておきたいのは、ひとかきひとけりについてのWorld Aquatics(旧FINA)規則です。簡単にまとめると次のようになります。
- スタートとターンの後、水中でひとかき(腕で太ももまでかく動作)を一回、続いてひとけり(平泳ぎのキック)を一回のみ許される
- このひとかきの最中に、ドルフィンキックを一回だけ入れることが認められている(以前は禁止されていましたが、現在のルールでは合法)
- ひとけりが終わったあと、頭は水面を破らなくてはいけない
- ドルフィンキックの位置やタイミングが規定から外れると失格になることがある
ルールは時々改定されるので、大会前には最新の規則を確認しておくと安心です。
推進力を最大化する3つのポイント
1. ストリームラインの精度
壁を蹴った直後はレース中で一番スピードが出ています。ここで姿勢が崩れると、せっかくのスピードを抵抗で失ってしまいます。両腕を耳の後ろにしっかり挟み、頭を腕の間に収め、つま先まで一直線に伸びる姿勢を作ります。お腹と背中で胴体を支える感覚があると、減速がぐっと少なくなります。
2. ドルフィンキックのタイミング
ドルフィンキックを入れるタイミングは、ひとかきの最中(腕を引き始めて太ももにかけて引ききるあたり)が基本です。早すぎても遅すぎても推進力に乗りません。「壁を蹴って減速を感じ始めたあたりで腕を動かし、その流れの中でドルフィンキックを一回入れる」という感覚がつかめると、勝手に距離が伸びていきます。
3. ひとかき・ひとけりのつなぎ方
ひとかきで太ももまで引ききったあと、腕を体の脇に沿わせて、もう一度ストリームラインに戻していきます。このとき手と一緒にひとけりを打つのではなく、ストリームラインに戻り切ってからひとけりを打つのがポイントです。動作が重なると抵抗の塊になってしまいます。
手は前方へ、足はしっかり後方へ、と方向の違う力を別タイミングで使うイメージを持つと、最後のひとけりで再加速しやすくなります。
よくあるつまずき
- 浮き上がるのが早すぎる ― スピードが残っているうちに浮いてしまうと、ひとかきひとけりで稼げる距離を失います。減速を感じる手前まで水中で粘る感覚がほしいところです
- 潜りすぎる ― 深く潜ると上に向かって泳ぎ直す距離が増えるので、結果的にロスになります。壁を蹴る角度を浅めに整えるところから見直すと改善しやすいです
- ドルフィンキックが大きすぎる ― 力いっぱい打つと姿勢が崩れて、かえってブレーキになります。腰から下を波のようにしならせる、軽めの一回で十分です
- ひとかきとひとけりが同時になる ― 動作が重なると抵抗の塊になります。手→ストリームライン→足、という順番を意識してみてください
練習の組み立て方
分解練習でひとつずつ確認する
- けのびのみ:壁を蹴ってストリームラインだけで進む。どこまで進むかを記録しておくと、姿勢の精度を測る目安になります
- けのび+ドルフィン1回:ストリームラインのままドルフィンキックを一回だけ加える。タイミングと深さを試します
- けのび+ドルフィン+ひとかきひとけり:全体の流れを通す。浮き上がるまでの距離を毎本同じ位置で揃えるよう意識すると、再現性が上がります
25mや50mに組み込む
毎回スタートとターンを丁寧に行うのは大変なので、たとえば「W-upや本数練習の最初の数本だけは壁蹴りからのひとかきひとけりを意識する」と決めてしまうのもひとつの方法です。すべての本数で気を張りすぎると疲れてしまうので、メリハリをつけて取り組むのがおすすめです。
動画で確認する
水中の動作は自分では見えません。スマホで横や水中から撮影してもらうだけで、潜る深さ・ドルフィンのタイミング・浮き上がりの位置がはっきり分かります。一回見るだけでも修正点がたくさん見つかるので、機会があれば取り入れてみてください。
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