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平泳ぎの歴史|古代からバタフライ分離・潜水ルールまで

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平泳ぎは、4泳法の中でも特に長い物語を持つ泳法です。海を渡るための実用的な泳ぎからオリンピック種目になり、やがてバタフライを生み、潜水ルールの変更を重ねて現在の形になりました。

昔から変わらないように見える平泳ぎが、実は何度も姿を変えてきた。そう思って歴史をたどると、普段のひとかき・ひとけりも少し違って見えてきます。

先に要点

平泳ぎは、バタフライを生みながら進化した

  • 1875年:マシュー・ウェッブが平泳ぎで英仏海峡を横断
  • 1904年:オリンピックに男子440ヤード平泳ぎが登場
  • 1953年:バタフライが平泳ぎから分離
  • 1956年:古川勝選手が潜水平泳ぎで金メダル
  • 現在:スタート・ターン後の水中動作も大切な技術に
時代出来事平泳ぎの変化
1538年初期の水泳指導書が出版泳ぎを教える文化が記録に残る
1875年英仏海峡横断長距離を進める泳ぎとして注目
1904〜1924年五輪種目として整備男子・女子の平泳ぎが国際競技へ
1930〜1950年代腕を水上から戻す泳ぎが登場バタフライへ分かれる
1956年潜水平泳ぎが注目潜水を制限するルールへ
2000年代水中ドルフィンキック1回を認める現在のひとかき・ひとけりへ
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競技よりずっと前から使われていた泳ぎ

古代の壁画や彫刻には、水の中で手足を動かす人の姿が残っています。静止画だけで現代と同じ平泳ぎだったとは言い切れませんが、左右の手足を使う安定した泳ぎが、古くから各地で使われていたと考えられています。

1538年には、ドイツ語圏の学者ニコラウス・ヴィンマンが「コリンベテス」と呼ばれる水泳書を出版しました。水泳が競技になるはるか前から、「どう泳ぐか」を人へ教える文化があったことを伝える資料です。

顔を上げたまま周囲を確認しやすく、ゆっくり長く進める。平泳ぎは、速さを争う前に、人が水を移動するための身近な泳ぎでした。

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1875年|平泳ぎで英仏海峡を渡ったマシュー・ウェッブ

1875年8月、イギリスの船員マシュー・ウェッブは、英仏海峡を21時間45分かけて泳ぎ切りました。記録によれば、その長い行程を平泳ぎで進んだとされています。

冷たい海と潮の流れの中を、一日近く泳ぎ続ける。現在とは伴走や補給の条件も違いますが、「人は泳いで海峡を渡れる」という出来事は、多くの人に強い驚きを与えました。平泳ぎが長距離を進む実用的な泳法として知られる、大きなきっかけになったのです。

1904年|オリンピックの独立種目になる

第1回近代オリンピックが開かれた1896年には、現在のような4泳法はまだそろっていませんでした。平泳ぎが泳法別の種目として初めて登場したのは、1904年セントルイス大会の男子440ヤードです。

現在につながる男子200m平泳ぎは1908年ロンドン大会、女子200m平泳ぎは1924年パリ大会で行われました。ここから平泳ぎは、「泳ぎ方の一つ」から、世界共通のルールで競う専門種目へ変わっていきます。

バタフライは平泳ぎの工夫から生まれた

1930年代、平泳ぎの選手たちは「腕を水の中で戻すより、水面の上から戻したほうが抵抗が少ないのでは」と考え始めました。脚は平泳ぎキックのまま、腕だけを水上から大きく戻す。当時はそれも平泳ぎの一種としてレースで使われていました。

ところが、この泳ぎは従来の平泳ぎより速く、見た目も大きく違います。「これは同じ種目なのか」という議論が続き、国際ルールの整理を経て1953年にバタフライが平泳ぎから分離されました。1956年メルボルン大会から、バタフライは独立したオリンピック種目になります。

つまり平泳ぎは、古い泳法でありながら、4泳法で最も新しいバタフライの出発点にもなりました。技術者の小さな工夫が、まったく新しい競技を生んだのです。

1956年|古川勝選手と潜水平泳ぎ

バタフライが独立種目になった1956年、平泳ぎでも歴史に残るレースがありました。メルボルン大会の男子200m平泳ぎで、古川勝選手が長い距離を水中で進む「潜水平泳ぎ」を使い、金メダルを獲得したのです。

水面より水中のほうが波の抵抗を受けにくいため、当時のルールでは大きな武器になりました。一方で、観客や審判から泳ぎが見えにくく、長い潜水には安全面の問題もあります。大会後、各ストロークで頭を水面へ出す方向へルールが改められ、現在の平泳ぎにつながっていきました。

「一人の選手を止めるためだけにルールが変わった」という単純な話ではありません。ただ、古川選手の泳ぎが、速さ・安全・判定のバランスを考える大きな節目になったことは確かです。

日本の平泳ぎを彩った3人の金メダリスト

選手主な実績歴史上の位置
鶴田義行1928・1932年 男子200m連覇日本水泳初の五輪金
古川勝1956年 男子200m金潜水平泳ぎの象徴
北島康介2004・2008年 100m・200m連続2冠2大会続けて両距離を制覇

鶴田義行|日本水泳初の五輪金

鶴田義行選手は1928年アムステルダム大会の男子200m平泳ぎで、日本水泳初の五輪金メダルを獲得しました。1932年ロサンゼルス大会でも優勝し、男子200m平泳ぎを連覇しています。

古川勝|ルールの転換点になった泳ぎ

古川選手の潜水平泳ぎは、当時のルールで水中の速さを最大限に生かす戦い方でした。現在は同じ泳ぎをレース全体で使えませんが、スタート・ターン後の水中動作が重要という平泳ぎの特徴は残っています。

北島康介|2大会連続の100m・200m二冠

北島康介選手は2004年アテネ大会と2008年北京大会で、男子100m・200m平泳ぎの両方を制しました。スタート、浮き上がり、ストローク、キック、レース運びを高い水準でまとめ、日本の平泳ぎを再び世界の中心へ押し上げました。

現代の平泳ぎは「うねり」と水中動作が鍵

現代の平泳ぎでは、呼吸で上体が上がり、手を前へ戻すときに頭と胸が水へ入り、キック後に細い姿勢へ戻る動きが見られます。一般に「ウェーブ平泳ぎ」「うねり平泳ぎ」と呼ばれる動きです。

ただし、大きく上下すれば速くなるわけではありません。腕で前へ進む流れと、脚を引きつけて蹴るタイミングがつながった結果として、自然なうねりが生まれます。

スタートと各ターン後には、腕を脚のほうまで引く一かきと、条件に沿ったドルフィンキック1回が認められています。古川選手の時代とは違う形でも、平泳ぎは今も水中動作の工夫が記録を左右する泳法です。大会へ出る方は、最新の競技規則と大会要項も確認してください。

現在のルールを種目横断で見たい方は、競泳ルールの変遷で確認できます。

歴史を知ると、平泳ぎの見え方が変わる

長距離を進むための泳ぎが競技になり、速さを求めた工夫からバタフライが生まれ、潜水の速さが新しいルールを生んだ。平泳ぎの歴史は、選手が速さを追い、ルールが競技の形を整えてきた歴史でもあります。

いま私たちが行う「ひとかき・ひとけり」や、呼吸からキックへつなぐうねりも、突然できた技術ではありません。長い試行錯誤の先にある動きです。そう考えると、いつもの練習の一本にも少し物語が感じられます。

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まとめ|最古級の泳法は、今も進化している

  • 平泳ぎは近代競泳より前から、実用的な泳ぎとして使われてきた
  • 1904年に五輪の泳法別種目として登場した
  • 腕を水上から戻す工夫が、バタフライ誕生へつながった
  • 古川勝選手の潜水平泳ぎは、ルールを考える大きな節目になった
  • 現代も、うねりと水中動作の技術は進化を続けている

次に平泳ぎを泳ぐときは、ひとかき・ひとけりの中に積み重なってきた工夫を少し思い出してみてください。力任せではなく、ルールの中でより速い動きを探し続けてきたことが、平泳ぎらしさなのかもしれません。

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