水泳で速く進むには、力を増やすだけでなく、前へ進む体へかかるブレーキを小さくすることが大切です。難しい計算をしなくても、頭・腰・膝が水を受けていないかを見れば、練習で直す場所を探せます。

コーチ、「水の抵抗を減らす」と言われても、何を変えればいいのか分かりません。力を抜けばいいんでしょうか?

力を抜くだけではないんです。まずは、頭・腰・膝のどこが水を受けているかを見ると、自分のブレーキを見つけやすくなりますよ。

難しい物理を覚えないと、自分の抵抗は分かりませんか?

3種類の名前だけ知っておけば十分です。大切なのは、泳ぎのどの動きと結びつくかなんですよ。
先に結論
頭から足先までの大きな凹凸を減らす
- 呼吸:頭を上へ持ち上げず、体の回転で口を出す
- 姿勢:胸を張りすぎず、腰と脚を水面近くへ保つ
- 手足:水を押す場面はしっかり、戻す場面はコンパクトに
- 比べ方:一度に一か所だけ変え、25mで確認する
| 抵抗 | やさしく言うと | 泳ぎで見る場所 |
|---|---|---|
| 摩擦抵抗 | 体や水着の表面を水が流れる抵抗 | 水着のフィット、体表 |
| 圧力抵抗 | 体で水を押し分ける抵抗 | 頭、胸、腰、膝の出っ張り |
| 造波抵抗 | 水面に波を作る抵抗 | 頭の上下動、体の深さ、水しぶき |
水泳で働く3種類の抵抗

摩擦・形・波の抵抗は、別々の場面で出るんですか?

泳いでいる間は重なって出ています。ただ、練習では一度に全部を見ず、頭や脚など一か所ずつ比べれば大丈夫です。
摩擦抵抗|体や水着の表面を水が流れる
摩擦抵抗は、皮膚や水着の表面に沿って水が流れるときに生まれます。レース水着の表面やフィット感も関係しますが、普段の練習では、まず頭や脚が沈んで作る大きなブレーキから直すほうが変化を感じやすくなります。
圧力抵抗|頭・腰・膝が水を受ける
圧力抵抗は、体が水を押し分けるときに生まれます。呼吸で頭を高く上げる、腰や脚が沈む、膝が前へ大きく出ると、進む方向から見た体の面積が増えてブレーキになります。
造波抵抗|上下動で波を作る
水面近くでは、体が上下に動くほど波が大きくなり、前へ進むはずの力が波づくりに奪われてしまいます。水しぶきを消すことだけが目的ではありませんが、頭や胸が大きく上下しているときは姿勢を見直す合図になります。
速く泳ぐほど、姿勢の小さな崩れが効く

速く泳ごうとしたときほど、急に体が重くなる気がします。

速度が上がるほど、小さな姿勢の崩れもブレーキとして感じやすくなります。力を足す前に、進行方向へ大きな面を向けていないか見ましょう。

上手な人は、水しぶきが少ないのにスーッと進みますよね。

上下に大きく動かず、前へ力を使えているからです。水しぶきの少なさだけでなく、頭と腰の高さも見てみましょう。
速度が上がるほど、水から受ける抵抗は大きくなります。ゆっくり泳いだときには気にならなかった頭の上がりや脚の沈みが、ダッシュでは大きな重さとして表れます。
ダッシュで急に重くなる方へ
- 呼吸で頭が上がっていないか
- キックが深く沈んでいないか
- 入水した手が内側へ入り、体が蛇行していないか
力を強くする前に、この三つを一つずつ確認します。
ストリームラインは、抵抗を減らす基本姿勢

3種類を一度に減らす、分かりやすい姿勢はありますか?

スタートやターン後ならストリームラインです。手から足先までの大きな折れを減らすと、壁でもらった速さを生かしやすくなります。

腕で耳を強く挟めば、きれいな形になりますか?

肩へ力を入れすぎると腰が反ることがあります。痛みのない範囲で腕をそろえ、頭を腕の間へ置くことから始めましょう。
スタートやターン後は、壁を蹴った速さをできるだけ長く生かしたい場面です。手を重ね、頭を腕の間へ置き、腰の反りと脚の開きを小さくすると、体が水を受けにくくなります。
- 手を重ね、肘を伸ばす
- 前を見上げず、頭を腕の間へ置く
- 胸を張りすぎず、腰の反りを小さくする
- 膝とかかとを近づけ、足先まで細くする
- 止まるまで待たず、勢いが残るうちに泳ぎへつなぐ
詳しい姿勢と練習はけのび・ストリームラインの作り方で確認できます。
推進に必要な動きまで小さくしない

腕や脚を動かしたら抵抗が増えますよね。小さく動かしたほうがいいんでしょうか?

進むために水を押す動きは必要です。水を捉える場面はしっかり、手足を戻す場面はコンパクトに、と役割を分けて考えます。

かく速さと、腕を前へ戻す速さは同じじゃなくていいんですね。

はい。水を押すところと、姿勢を戻すところにメリハリがあると、余計なブレーキを減らしながら進めます。
腕や脚は、進むために水へ力を伝えます。抵抗を減らそうとして動きをすべて小さくすると、前へ進む力まで失います。大切なのは、水を押す場面と、手足を元へ戻す場面を分けることです。
| 場面 | 意識すること |
|---|---|
| 水を捉える | 手と前腕で水を後ろへ押す |
| 腕を戻す | 肩へ力を入れすぎず、次の入水へ運ぶ |
| キックで押す | 足やすねで水へ力を伝える |
| 脚を戻す | 膝を前へ出しすぎず、体の幅に収める |
水を捉える感覚は水泳のプルとは?で詳しく解説しています。
抵抗を増やしやすい5つの動作
| 動作 | 起こりやすいこと | 最初に試すこと |
|---|---|---|
| 呼吸で頭を上げる | 腰と脚が沈む | 頭を横へ回し、片目を水中へ残す |
| 入水が内側へ入る | 体が左右へ蛇行する | 肩の延長線上へ入水する |
| 脚が深く落ちる | 下半身が大きな面になる | 頭・胸・骨盤の順に姿勢を見る |
| 膝を前へ引く | 太ももが水を受ける | 脚の戻しを少し小さくする |
| ターン後すぐ動く | 壁の速さを失う | 細い姿勢から泳ぎへつなぐ |
クロールの呼吸で脚が沈む方は、息継ぎで体が沈む原因もあわせて確認してください。
プールでできる3つのA/Bテスト

頭も腰もキックも気になって、全部直さないといけない気がしてきました。

最初は一つだけで大丈夫です。たとえば今日は「呼吸で頭を持ち上げない」だけを試して、25mの感覚を比べましょう。

一つだけなら続けられそうです。良くなったかは、タイムだけで見ますか?

タイムに加えて、ストローク数と呼吸の楽さも見ます。同じ力感で2〜3回よくなれば、自分に合う変化だと分かりやすいですよ。
| テスト | AとBで変えること | 記録すること |
|---|---|---|
| けのび | 前を見る/頭を腕の間へ置く | 同じ蹴りで進んだ距離 |
| クロール25m | 顔を上げる/横へ回す | タイム、ストローク数、呼吸の楽さ |
| ターン後 | いつもの姿勢/手・頭・脚を細くそろえる | 5mまでの進み方 |
どのテストも、同じ距離・同じ休憩・近い力感で2〜3回ずつ行います。良かったほうを普通の泳ぎへ戻して試し、同じ感覚が出るか見ましょう。
練習道具は、道具なしの泳ぎへ戻して使う
- フィン:速度を補い、姿勢や入水へ集中しやすい
- プルブイ:脚を浮かせ、プルと頭の位置を確認しやすい
- パドル:手と前腕で水を捉える感覚が分かりやすい
- ビート板:キックを分けて確認できるが、頭を上げた姿勢は通常泳と異なる
道具で良い感覚が出たら、最後に道具なしで25m泳ぎます。道具を外したあとも頭・腰・手の位置を再現できれば、通常の泳ぎへつながっています。
陸上でストリームラインを確認

プールに行けない日も、抵抗の少ない姿勢を練習できますか?

仰向けで腕を頭の上へ伸ばし、腰を反りすぎず20〜30秒保ちます。肩に無理のない幅で、細い姿勢を覚えましょう。
仰向けになり、両腕を頭の上へ伸ばします。腰と床の間が大きく空かないようにお腹を軽く支え、膝とかかとをそろえます。肩がつらい方は、腕の幅を少し広げて構いません。
20〜30秒を1〜2回で十分です。きれいに見せるより、首・肩・腰へ無理なく細い姿勢を作れる位置を覚えます。
まとめ|最初は頭・腰・膝を一つずつ見る
- 水の抵抗は、摩擦・圧力・造波の3種類に分けると分かりやすい
- 普段の練習では、頭・腰・膝が作る大きなブレーキから見る
- ストリームラインは、スタートとターン後の速さを生かす基本姿勢
- 水を押す動きはしっかり、手足を戻す動きはコンパクトにする
- 一度に一か所だけ変え、25mで比べる

次の練習では、まず呼吸で頭が上がっていないかだけ見てみます。

いいですね。一度に一つ変えて、普通の泳ぎへ戻したときに楽に進めるか確かめていきましょう。



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