
「練習中、肩の前に違和感がある」
「クロールのリカバリーで肩がギクッとする」
「マスターズ世代になってから肩の痛みが長引くようになった」
そんなスイマーは要注意。それは 水泳肩(スイマーズショルダー)の初期症状かもしれません。
水泳肩(スイマーズショルダー)とは|まず定義を確認
水泳肩(スイマーズショルダー)とは、クロール・バタフライ・背泳ぎのリカバリー動作の反復によって、肩関節のインナーマッスル(腱板・棘上筋など)が肩甲骨と上腕骨の間で繰り返し挟み込まれて炎症を起こす状態を指します。医学的には 「肩関節インピンジメント症候群(impingement syndrome)」と呼ばれる障害の一種です。
インピンジメント = 関節内で組織が 挟み込まれること
研究では、競技歴のある競泳選手の40〜80%が一度は経験するとされる、極めて頻度の高い障害です。特に:
- 肩を多用するクロール・バタフライ・背泳ぎ選手
- マスターズ世代(40代以降)
- 練習量を急に増やしたシーズン
誰でもなる可能性がある前提で、予防に取り組むのが賢明です。この記事では、僕がこれまで多くのスイマーを見てきた経験から、水泳肩の症状・進行段階・主な原因・予防法・治し方の方向性までを整理してお伝えします。早期発見と予防に役立ててください。
※ 本記事は一般的な情報の整理であり、診断・治療を目的としたものではありません。痛みが続く場合は必ず整形外科(できればスポーツ整形)を受診してください。
症状と進行段階|4ステージで悪化する
水泳肩は段階的に進行します。各ステージの症状を知っておくと、早期対応が可能です。
ステージ1:違和感期(初期)
- 練習後に肩前面に 軽い違和感
- 翌日には消えることが多い
- 「なんか変だな」程度の感覚
ステージ2:練習中の痛み(進行期)
- 練習中、特に リカバリー時に痛み
- 練習後数時間〜半日続く
- 練習を控えると治まる
- ここで対処すれば回復が早い段階
ステージ3:日常生活でも痛む(慢性期)
- 練習以外でも肩を動かすと痛い
- 上着を脱ぎ着するだけで痛い
- 夜寝返りを打つと痛い
- 練習継続が困難・整形外科受診を強く推奨する段階
ステージ4:可動域制限(重症期)
- 肩が上がらない・特定の角度で激痛
- 「腱板断裂」を疑う段階
- MRI検査・手術検討の可能性
ステージ1〜2で気付いて手を打つのが理想です。「なんとなく痛い」を放置しないことが、長く泳ぎ続けるための一番のポイントになります。
水泳肩の主な4つの原因
原因①:オーバーユース(使いすぎ)
最も多い原因です。練習量が肩のキャパを超えると発症しやすくなります。
- 急に距離を増やした(夏合宿・大会前)
- 1週間連続で泳いだ
- 高負荷ドリル(パドル・チューブ)の多用
対策:練習量の段階的増加 + 適切な休養。「先週より一気に2倍泳いだ」は黄信号です。
原因②:フォームの問題
ストロークフォームの崩れで肩への負担が偏ります。
- リカバリー時に肘が下がる(=肩前面に負荷集中)
- ローリング不足(=肩関節の可動域を超える動き)
- キャッチ位置が深すぎ・浅すぎ
- 入水位置が頭の真上(クロスオーバー)
対策:正しいフォーム確認 + 映像チェック。疲れてくるとフォームが崩れやすいので、疲労時こそ意識的に確認するのがおすすめです。
原因③:柔軟性不足
特に肩甲骨周りの硬さが大きな要因になります。
- 胸郭(きょうかく)の硬さ
- 肩甲骨の動きが悪い
- 大胸筋が短縮している
- 広背筋が硬い
対策:毎日のストレッチ + 定期的な可動域チェック。
原因④:筋力バランスの崩れ
前面の筋肉(大胸筋・三角筋前部)ばかり発達して、後面(腱板・菱形筋など)が弱い状態になりがちです。水泳は基本「前に押す動作」が多いので、自然とバランスが崩れていきます。
対策:後面強化のための陸トレを追加。週2〜3回の頻度で十分です。
セルフチェック方法
チェック1:ペインフルアーク(疼痛弧)
- 立った状態で腕を真横から上に挙げていく
- 60度〜120度の範囲で痛みが出るか確認
- その範囲だけ痛む → 水泳肩の可能性が高い
チェック2:エンプティカン(空き缶)テスト
- 親指を下に向けて腕を斜め前方に伸ばす(空き缶を逆さにする姿勢)
- その状態で誰かに腕を下に押してもらう
- 抵抗時に肩前面に痛み → 棘上筋の炎症の可能性
チェック3:内旋制限
- 後ろ手で背中を触る(腰 → 背中の中央 → 肩甲骨へ)
- 左右で届く位置に大きな差がある or 痛みで届かない
- 肩関節の柔軟性低下のサイン
1つでも該当したら、練習量を見直したうえで整形外科受診を検討してください。
予防ストレッチ|毎日5分でOK
ストレッチ1:胸郭ストレッチ(大胸筋伸ばし)
- ドアの枠に肘から手のひらまでつける
- 体を反対側に向けて胸を開く
- 30秒キープ × 左右各2セット
ストレッチ2:肩甲骨はがし
- 四つん這いになる
- 片手を反対側の肘の下を通して伸ばす
- 肩甲骨周りが伸びる感覚で30秒
ストレッチ3:内旋ストレッチ
- 横向きに寝て、下の腕を90度に曲げる
- 上の手で下の手を床方向に押し下げる
- 痛みがない範囲で30秒
ストレッチ4:胸椎モビライゼーション
- 仰向け・膝立て・両手を頭の後ろ
- 肘を開きながらゆっくり背中を反らせる
- 10回 × 2セット
練習前後に5〜10分続けると、可動域が整ってきます。
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強化エクササイズ|後面の弱さをカバー
エクササイズ1:チューブを使った外旋運動
- ゴムチューブを固定し、肘を90度に曲げて外側に開く
- 15回 × 3セット
- 棘上筋・棘下筋の強化に効果的
エクササイズ2:肩甲骨寄せ運動
- うつ伏せで両手を横に広げる
- 肩甲骨を寄せながら腕を浮かせる
- 10回 × 3セット
エクササイズ3:プランクYTW
- プランク姿勢で両手を「Y」「T」「W」の形に動かす
- 各5回 × 2セット
- 肩甲骨の可動域+体幹の連動アップ
エクササイズ4:プローン・コブラ
- うつ伏せで両手を下に伸ばし、上半身を反らせる
- 10秒キープ × 5セット
週2〜3回、陸トレに組み込むと予防効果が高まります。
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水泳肩の治し方の方向性|痛みが出たらまず何をする?
「水泳肩 治し方」「水泳肩 痛み 治し方」「水泳肩 治らない」と検索されている方が多くいらっしゃいますが、治療方針は症状の段階や個人差によって異なるため、必ず整形外科(できればスポーツ整形)で診断を受けることを前提にしてください。ここでは、医療機関を受診するまでの間にできるセルフケアの一般的な方向性を整理します。
Step 1:練習量を半分にする
完全休養ではなく 「半分にする」が現実解です。完全に泳ぐのをやめると今度は復帰時の負荷が大きくなるので、量を落として痛みのない範囲で動かしておくのがおすすめです。
- 距離を50%程度に減らす
- 強度を下げる(イージーペース中心)
- 痛みが出る種目(バタフライ・クロール多用練習)は避ける
Step 2:アイシング
練習直後に15〜20分、肩の前面を冷やします。氷嚢や保冷剤をタオルで包んで使うと安全です。
Step 3:1週間後に再評価
- 改善している → 徐々に量を戻す
- 変わらない → 整形外科受診
- 悪化 → 即受診
Step 4:避けたいNG行動
- 痛みを我慢して練習継続する
- 鎮痛剤で対症療法しながら泳ぎ続ける
- 「肩を回せば回復する」と動かしすぎる
水泳肩が治らないと感じたら|専門医受診の目安
セルフケアで2週間以上改善が見られない、あるいは以下に当てはまる方は、整形外科(スポーツ整形クリニック推奨)を受診してください。
- 痛みが2週間以上続く
- 夜寝ていて痛みで目が覚める
- 肩が水平より上に上がらない
- 腕の力が抜ける感覚がある
- 腕や指にしびれが出る
早期受診で MRI検査・適切なリハビリを受ければ、競技復帰までの期間が大幅に短縮できます。自己判断で長引かせるよりも、専門家に診てもらった方が結果的に早く戻れます。
再発防止|長く泳ぎ続けるための習慣
一度治っても、再発しやすいのが水泳肩の特徴です。長く泳ぎ続けるためには、以下の習慣を生活に組み込んでおきましょう。
- 練習前後の肩甲骨・胸郭ストレッチを習慣化する
- 週2〜3回の後面強化トレで筋力バランスを保つ
- 練習量は週単位で段階的に増減する(急増を避ける)
- パドル・チューブなどの高負荷ドリルは肩の状態を見て頻度調整する
- 違和感の段階で休む勇気を持つ



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