「同じ力で泳いでいるのに、日によって進み方が違う気がする」。ケイコさんがふと口にした素朴な疑問から、今日の話は始まります。実はその感覚、水の科学で説明できるんです。

コーチ、ちょっと不思議に思っていたことがあって。水面ギリギリを泳ぐと、なんだか進みにくい気がするんです。深さって、スピードに関係あるんですか?

いいところに気づきましたね。それ、ちゃんと理由があるんですよ。水深はスピードにも抵抗にも、けっこう大きく関わってくるんです。

えっ、深さでそんなに変わるんですか。なんとなくで泳いでました…。

多くの人がそうですよ。カギになるのが造波抵抗という言葉。今日はここを一緒にほどいていきましょう。
まず結論|泳ぐのに最適な深さは「水面下50cm〜1m」
難しい話に入る前に、今日持ち帰ってほしい要点を先に置いておきます。ここだけ覚えて帰っても十分です。
- 速さを邪魔するもの → 造波抵抗(水面の波)
- 最適な深さ → 水面下50cm〜1m
- 外すと損 → 浅すぎると抵抗増、深すぎると浮力減
水泳は「水の抵抗をいかにコントロールするか」の勝負なんです。

50cm〜1mって、意外と具体的な数字なんですね。でも造波抵抗…って、そもそも何ですか?
水泳で体が受ける抵抗は、大きく分けると3種類あります。まずはここを整理しておきましょう。
| 抵抗の種類 | どんな抵抗? |
|---|---|
| 造波抵抗(Wave Drag) | 水面で波を作ることで生まれる抵抗 |
| 摩擦抵抗(Friction Drag) | 水と体が触れることで生じる摩擦 |
| 圧力抵抗(Pressure Drag) | 水を押しのける時の圧力差による抵抗 |

この中で造波抵抗は、水面付近でいちばん大きくなるのが特徴なんですよ。だから速く泳ぐには、これをどう減らすかが勝負なんです。

じゃあ、水面でバシャバシャ波を立てるほど、自分で自分の邪魔をしてるってことですか。

まさにその通り。よく飲み込めていますよ。
水深が深いと、なぜ抵抗が減るのか
ここで面白い事実を。国際大会のプールは水深3mが推奨されています。深いほど造波抵抗が減るからです。

3mも!? そんなに深いんですね。どうして深いと抵抗が減るんですか?

波の反射がカギなんです。浅いプールと深いプールを並べて比べてみましょうか。
| 水深 | 中で起きていること | 造波抵抗 |
|---|---|---|
| 浅い(1.5m以下) | 水面の波が底に反射して乱流が発生。泳ぐたびに水がかき乱される | 最大 |
| 深い(2.5m以上) | 波の反射が減り、水の流れが安定。動きがスムーズに | 最小 |

浅いと波が底で跳ね返って乱れちゃうんですね。深いほうが水が落ち着く、と。

完璧です! 水深3mのプールは、造波抵抗を最小限に抑えてスピードを出しやすい環境なんですよ。
でも、深ければ深いほど良いわけではない

じゃあ水深3mのプールなら、なるべく深いところ…1.5mくらいを泳げばいいんですか?

それが、そうとも言えないんです。深すぎても別の問題が出てくるんですよ。両極端を比べてみましょう。
| 泳ぐ深さ | 何が起きる | 判定 |
|---|---|---|
| 水面に近すぎ(30cm以下) | 波が発生して造波抵抗が最大。スピードが落ちる | NG |
| 深すぎ(1.5m以上) | 静水圧で浮力が減り、体を浮かせるのに余分な力がいる | NG |
つまり、浅すぎても深すぎてもダメ。その真ん中に「ちょうどいい深さ」があります。それが最初にお伝えした水面下50cm〜1mです。
- 水面の波の影響を受けにくい
- 浮力を最大限に活かせる
- 水の流れが安定し、効率的なストリームラインを保てる

浅すぎず、深すぎず。ちょうどいいバランスのところなんですね。なんだか、無理せず一番おいしいところを泳ぐ感じで、いいですね。

その受け止め方、すごくいいですよ。頑張りすぎず、効率のいいところを選ぶ。まさにそれが賢い泳ぎです。
最適な水深を活かす、3つの実践ポイント
理想の深さがわかったら、次はそれを泳ぎに落とし込む番です。ケイコさんが次の練習ですぐ試せるように、3つに絞ってお伝えします。

① ターン後の「けのび」と浮き上がり。けのびは水深1m付近を保って、浮き上がりは水面下50cm〜80cmを意識してください。

あ…私、ターンのあとつい深く潜りすぎていたかもしれません。楽な気がして底のほうへ沈んでました。

気づけたなら大丈夫。深く潜りすぎると浮上に余計な力がいって、かえって疲れるんです。浅めに戻すほうが実は楽ですよ。

② 姿勢はフラットに。頭を持ち上げすぎると体が沈みます。必要以上に潜らず、ストリームラインを保って無駄な動きを減らしましょう。

頭を上げると沈む…。意識してないと、つい前を見ようとして上げちゃいますね。

③ 水中ドルフィンキックは水面下80cm前後が目安です。潜りすぎると浮上に時間がかかって、そこでスピードを損してしまうんですよ。

80cm前後、ですね。全部いっぺんは難しそうだから、まずはターンの潜りすぎだけ、次の練習で直してみます。

それでいいんです! 一個ずつで十分。ひとつ身につくとまた次、と続けられますからね。
まとめ|深さを味方につける
今日のおさらいです。ここだけ見返せば思い出せます。
- 水深3mのプールでは造波抵抗が最小限に抑えられる
- 最適な泳ぐ深さは水面下50cm〜1m
- ターン後は「水深1m付近」から「水面下50cm〜80cm」へ浮き上がる
- 水面に近すぎると造波抵抗が増え、深すぎると浮力が減る
深さを味方につければ、同じ力でももっとスムーズに前へ進めます。

「水の抵抗をコントロールする」って、こういうことだったんですね。深さを味方につけてみます。

その意気です! 水深をうまく使って理想のストリームラインを保てば、さらにスピードアップも目指せますよ。



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