
コーチ、相談があって…。後半になると急に体が重くなって失速しちゃうんです。同じ距離でも、あるペースから先で一気にきつくなって。私、根性がないだけなんでしょうか。

それ、根性の問題じゃないですよ。ユウコさんが感じている壁には、ちゃんと名前があるんです。

え、名前があるんですか?

OBLA(乳酸性作業閾値)というラインです。あまり馴染みのない言葉かもしれないけど、これを知るとメニューの見え方がぐっと変わりますよ。
ユウコさんが感じている「後半失速の壁」の正体は、OBLA(乳酸性作業閾値)と呼ばれるラインです。運動強度を少しずつ上げていったときに、血中乳酸濃度が急に立ち上がり始める強度のこと。「乳酸が溜まり始めて粘れなくなるライン」と思うと感覚的に近いです。
まず結論|後半失速の壁=OBLAを攻略する
押さえてほしい要点は3つ。ここさえ掴めば、失速は「根性不足」ではなく攻略できる課題に変わります。
- 後半失速の壁=OBLA(乳酸性作業閾値)
- OBLAは「心拍」「ペース」「主観」で見る
- OBLAを高めるトレでメニューが組める
OBLAを知ると、あなたのメニューの見え方がぐっと変わります。

失速って、てっきり私の気持ちが弱いせいだと思ってました…。ちゃんと理由があったんですね。

そうなんです。自分を責める必要はまったくない。ひとつずつ見ていきましょう。
OBLAは Onset of Blood Lactate Accumulation の略で、日本語では「乳酸性作業閾値」。一般的には血中乳酸が4mmol/Lに達するタイミングを目安に使うことが多いです(個人差はあります)。

言葉だと少し難しくて…。感覚で言うと、どんな感じなんでしょう?

強度を3段階のイメージに置き換えると、すごく分かりやすいですよ。
| 強度の位置 | 体の感覚 |
|---|---|
| OBLAより下 | 呼吸も保てて、フォームも崩れにくい。長く粘れる |
| OBLA付近 | きついけれど、なんとか同じペースを刻める「がんばれば持つ」ライン |
| OBLAを超える | 乳酸の蓄積が一気に進み、フォームが崩れて急に失速する |
ざっくり言えば、OBLAは「これ以上強度を上げるとガクッとくるライン」。このラインを少しでも上に押し上げることが、競泳トレーニングの大きなテーマになります。

つまり、乳酸が溜まり始めて、それ以上の強度で泳ぐと急にパフォーマンスが落ちるライン、ということなんですね?

その理解でばっちりです。だからOBLAを高めれば、より速く・より長く粘れる泳ぎが作れるんですよ。
OBLAは「心拍」「ペース」「主観」で見る
OBLAは本来、血中乳酸を実測しないと正確には分かりません。でも一般のスイマーが毎回の練習で乳酸測定をするのは現実的ではないので、間接的な指標で「だいたいOBLA付近」を見つけるのが現場の運用です。目安はこの3つ(個人差あり)。
- 心拍数:概ね最大心拍の85〜90%程度。多くの人で150〜170bpm前後
- 主観強度:「会話はもう難しい」「ぎりぎり同じペースを刻める」レベル
- ペース感:全力ではないけれど、少し上げると一気にきつくなる、その手前のライン

心拍とか、なんだか難しそうで私にできるか不安です…。

大丈夫。スマートウォッチや心拍計でハートレートを見える化すれば、誰でも「自分のOBLAはこのあたりかな」が掴めますよ。

何分のペースで、心拍がどのくらいで、どんな主観だったか。この3点をセットで残しておくと、後から振り返る精度がぐっと上がります。
泳ぎながら使えるスマートウォッチや心拍計は、まとめて便利アイテム一覧ページに紹介しています。OBLA付近の強度を狙うなら、心拍を見える化できる道具があると練習の精度が上がります。
OBLAと競泳の距離別の関係

OBLAって、種目によって関わり方が違ったりするんですか?

いいところに気づきましたね。どの種目でも関わるんですが、距離によって「どう関わるか」が変わるんです。
| 種目 | OBLAの影響度 | 重要なポイント |
|---|---|---|
| 短距離(50m、100m) | ★★★☆☆ | OBLAを大きく超えるスピードで泳ぎ切るので、後半の耐乳酸能力が鍵 |
| 中距離(200m、400m) | ★★★★★ | OBLA付近を維持し続けるペース配分が勝負どころ |
| 長距離(800m、1500m) | ★★★★☆ | OBLAより少し下のゾーンで、乳酸を効率よく処理しながら粘る |
同じ「OBLAを意識する」でも、短距離と長距離では狙うゾーンが違います。つまり、自分の出る種目によって「OBLAをどう使うか」も変わってくるんです。
OBLAを高めるトレーニングの組み立て方

では、私のOBLAを高めるには、どんな練習をすればいいんでしょう?

ポイントは「OBLAより少し上で頑張る練習」と「OBLA付近を粘る練習」を、目的に合わせて使い分けることです。
OBLAを押し上げるには、「乳酸を出して処理させる」アプローチと「乳酸が溜まり始めるラインで粘る」アプローチの両方が役立ちます。どちらか片方だけだと偏りやすいので、2種類のメニューを目的別に使い分けるイメージです。
まず①インターバル。OBLAを少し超える強度で短〜中距離を繰り返し、乳酸を出しながら処理する力と耐乳酸能力を養います。
- 50m × 10本(レースペースより少し速め/サークル1:30〜1:45)
- 100m × 6本(800〜1500mのレースペースより速い強度/休憩30秒)
- 200m × 4本(OBLAをやや超えるペース/休憩45秒)

本数を重ねると、後半きっと私フォームがぐちゃぐちゃになっちゃいそうです…。

むしろそのきつくなる後半こそ、フォームをわざと丁寧に保つ意識が大事なんです。乳酸が溜まっても崩れない動きを、身体に覚えさせる作業だと思ってください。
次に②スレッショルド。OBLAぎりぎりの強度で長めの距離を泳ぎ、「乳酸が出始めるラインそのものを上に押し上げる」練習です。
- 400m × 3本(OBLA付近のペース/休憩60秒)
- 800m × 2本(同じペースで2本目も維持/休憩90秒)
- 1500m × 1本(中盤以降ペースを落とさない意識で)

「全力ではないけれど、最後まで同じペース」って…私、つい最初に飛ばすか、逆に自信なくて抑えすぎちゃうか、どっちかな気がします。難しそう。

実はそこがコツなんです。1本目で頑張りすぎると2本目以降が落ちて、「維持する」練習になりません。だから最初の1本のペース設定がとても大事。

最初の1本を、抑えめに揃える感じですね?

そうです。それができると、レース中盤でも崩れにくくなる。合い言葉だと思って覚えておいてくださいね。
スレッショルドの考え方や具体的な練習の組み方は、別記事「水泳持久力向上の鍵:スレッショルドトレーニングの実践ガイド」でもう少し詳しくまとめています。
さらに③陸上での補助トレーニング。水中だけでなく陸上でも高強度を繰り返して乳酸耐性を上げます。プールの時間が限られている人ほど効果を感じやすい部分です。
- スピードスクワット(30秒全力 → 15秒休憩 × 4セット)
- バーピー(40秒全力 → 20秒休憩 × 5セット)
- 階段ダッシュ(15秒全力 → 15秒休憩 × 10本)
陸上の高強度インターバルは、心肺機能と乳酸処理能力を同時に押し上げるのに向いています。プールに入れない日のメニューとしても使いやすいので、泳ぎ込みと並行して取り入れる形がおすすめです。
OBLAを活かすレース戦略(距離別)

トレーニングでOBLAを高めたら、次はレース中のペース配分に活かしていきましょう。距離で考え方が変わりますよ。

はい、お願いします。私が出るのは中距離が多いので、特に気になります。
短距離(50m、100m)はそもそもOBLAを大きく超えた強度で泳ぎ切る種目。ペース配分というより「OBLAを超えてからどれだけフォームを保ってゴールまで持っていけるか」が勝負どころ。練習で「乳酸が溜まった後半でも崩れない泳ぎ」を作っておくと、そのままレース後半の伸びにつながります。
中距離(200m、400m)はOBLA付近を維持し続ける時間が一番長い種目。前半で気持ちよく入りすぎるとOBLAを大きく超えてしまい、後半に乳酸が一気に溜まって失速します。序盤を抑えて、中盤を一定に、終盤に少しだけ上げるのがオーソドックスな考え方です。

あっ…私の失速、まさにそれかもしれません。楽しくなって前半で飛ばしちゃってました。

原因が見えましたね。普段の練習で「同じペースで何本も刻む」感覚を身につけておくと、レース当日の判断がぶれなくなりますよ。
長距離(800m、1500m)はOBLAより少し下のゾーンで、いかに長く粘れるかが勝負。中盤までは「ここを超えたら失速する」ラインのちょっと手前を守り、ラスト200m〜400mで一気にOBLAを超えにいく組み立てが現実的です。
スレッショルド練習で「同じペースを長く刻む感覚」を、インターバル練習で「最後に上げ切る感覚」を、別々に養っておくと、本番でも自然と使い分けられるようになります。

なるほど…!OBLAを高めると、速く泳ぐだけじゃなくて、後半のスタミナも伸びるんですね。ちょっと自信が出てきました。

その気持ちが一番大事。OBLAを意識した練習を積み重ねれば、乳酸に負けない泳ぎが少しずつ身についていきますよ。
まとめ|OBLAは積み重ねで押し上がる
- OBLA(乳酸性作業閾値)は血中乳酸が急に増え始めるライン(目安は4mmol/L)
- 心拍・主観・ペースの3点で「自分のOBLA付近」を掴むのが現場のやり方
- インターバル(OBLAを少し超える)とスレッショルド(OBLA付近を粘る)を目的別に使い分ける
- 陸上の高強度トレーニングも並行して取り入れると、乳酸耐性が底上げされる
- レースでは距離ごとに「OBLAをどう使うか」が変わるので、種目に合った練習を選ぶ
OBLAは一度きりの数値ではなく、積み重ねるごとに少しずつ押し上がっていくものです。

半年後に変化を実感できるって、なんだか励みになります。私、続けられるか不安だったけど…。

今のラインを把握しておけば、半年後に「同じきつさで前より速く泳げる」変化を感じやすくなりますよ。焦らなくて大丈夫。

焦らず積み重ねますね!自分のOBLAを少しずつ上に押し上げていきます。

その意気です。距離と強度のバリエーションを組み合わせながら、一緒に押し上げていきましょう。
個別の相談が必要な方へ

ただ…自分のレベルだとOBLAをどのあたりに置けばいいのか、まだ自信がなくて。私みたいな人でも大丈夫でしょうか。

そういう方にこそ、プライベートレッスンをお受けしています。強度設定を一緒に考えたり、フォームを見ながら練習の組み立て方をお伝えしたり、一人ひとりの目標・体力・環境に合わせて一緒に組み立てていきます。
「OBLAをどのあたりに置けばいいか分からない」「メニューの強度設定を一緒に考えてほしい」「フォームを見てもらいながら練習の組み立て方を知りたい」——そんな相談も歓迎です。体調や不安がある場合は、無理をせず専門家に相談しながら進めていきましょう。興味があれば、ご予約ページからどうぞ。

ありがとうございます!さっそく次の練習から、心拍を見ながら自分のOBLAを探してみますね。



コメント