背泳ぎは、4泳法の中で唯一、レースの大部分を仰向けで泳ぎます。もともとは顔を水面へ出しやすい実用的な泳ぎ方で、そこへ交互の腕・バタ足・水中ドルフィンキックが加わり、現在の速い背泳ぎへ進化しました。
歴史をたどると、なぜ水中スタートなのか、なぜ15mルールがあるのか、日本で「バサロ」と呼ばれる技術が注目されたのかがつながります。
先に3つだけ
仰向け泳ぎから、交互ストロークと水中技術が発達した
- 1900年:パリ五輪で男子200m背泳ぎを実施
- 1910年代:左右の腕を交互に回す泳ぎが広がる
- 1988年以降:長い水中ドルフィンキックをきっかけに距離を規制
| 年 | 出来事 | 現在へのつながり |
|---|---|---|
| 1900年 | パリ五輪で男子200m背泳ぎ | 五輪の泳法別種目へ |
| 1912年 | Harry Hebnerが男子100mで金 | 交互ストロークの発展期 |
| 1924年 | 女子100m背泳ぎを初実施 | 女子種目が五輪へ |
| 1932年 | 清川正二が男子100mで金 | 日本背泳ぎ初の五輪金 |
| 1988年 | ソウル五輪で長い水中局面が注目 | 潜水距離のルール改定へ |
| 2014年 | 背泳ぎ用スタートレッジを導入 | 壁を蹴る足場が進化 |
なぜ背泳ぎは仰向けで泳ぐのか
仰向けは口と鼻を水面へ出しやすく、水の上で休んだり呼吸を確保したりしやすい姿勢です。水上安全や移動のための泳ぎ方が先にあり、近代競泳の発展とともに速さを競う泳法へ整えられました。
初期の背泳ぎには、両腕を同時に動かす泳ぎや、平泳ぎに近い脚の動きもありました。現在のように左右の腕を交互に回し、バタ足を打つ形は、競技の中で少しずつ磨かれていきます。
今の泳ぎにつながるポイント
仰向けだから呼吸はしやすくても、頭を持ち上げると腰が沈みます。水面へ顔を預け、頭から足先まで長く保つことが背泳ぎの土台です。
1900年|オリンピックで背泳ぎが始まる
1900年パリ五輪では、男子200m背泳ぎが行われました。1904年セントルイス大会では100ヤード、1924年パリ大会では女子100m背泳ぎが初めて実施され、男女の競技として広がっていきます。
距離やルールは現在と同じではありませんでしたが、泳法を分けて速さを競う背泳ぎの歴史は、ここから本格的に始まりました。
1912年|交互ストロークが背泳ぎを速くした
米国のHarry Hebnerは、1912年ストックホルム五輪の男子100m背泳ぎで金メダルを獲得しました。この時期、クロールの発展と並行して、背泳ぎでも左右の腕を交互に水上から戻す形が広がります。
腕を交互に動かすと、推進を途切れにくくできます。そこへ脚を交互に動かすバタ足が組み合わされ、現在の背泳ぎに近いリズムが作られていきました。
背泳ぎだけが水中からスタートする理由
背泳ぎは仰向けで泳ぐため、ほかの3泳法のように台から前方へ飛び込まず、水中で壁を向いてスタートします。グリップを持ち、合図に合わせて壁を蹴り、仰向けの流線形へ入ります。
2014年には背泳ぎ用スタートレッジが規則へ導入されました。水面近くの壁に取り付ける細い足場で、濡れた壁でも足を置きやすくします。設備がない大会もあるため、普段は壁からもスタートできるよう練習します。
スタート練習で見る3つ
- 両足で壁へ圧をかけられる位置
- 頭を上げず、手の間へ入る姿勢
- 壁を離れたあとに腰が落ちない流線形
1988年|「バサロ」と潜水距離の制限
1988年ソウル五輪の男子100m背泳ぎでは、David Berkoff選手と鈴木大地選手が、スタート後に長い水中ドルフィンキックを使いました。鈴木選手は55秒05で優勝し、Berkoff選手が55秒18で続きます。
水中を長く進む技術がレースへ大きな影響を与えたことで、背泳ぎの潜水距離はまず10mへ制限され、のちに15mへ変わりました。現在はスタートと各ターン後、15mまでに頭が水面を破る必要があります。
日本では水中ドルフィンキックを「バサロ」と呼ぶことがあります。練習では距離だけを伸ばすより、壁を蹴った速さを保ち、浮き上がりから水上のストロークへ滑らかにつなぐことが大切です。
水中練習では:長い息止めや過換気を行わず、指導者や監視員がいる環境で練習してください。
現在の背泳ぎの主なルール
| 場面 | 主なルール |
|---|---|
| スタート | 水中で壁を向き、両手でグリップを持つ |
| 泳法 | ターン動作を除き、仰向けの姿勢を保つ |
| 水中 | スタート・各ターン後15mまでに頭が水面を破る |
| ターン | うつ伏せ側へ回ったら、連続した動作で壁へ入る |
| フィニッシュ | 仰向けの姿勢で壁へタッチする |
15m表示やターンを含む競泳ルール全体の変化は、競泳ルールの進化史で確認できます。
日本の背泳ぎをつないだ3人
清川正二|1932年ロサンゼルス五輪金
清川正二選手は男子100m背泳ぎで金メダルを獲得し、日本背泳ぎ初の五輪王者になりました。このレースでは日本勢が表彰台を独占しています。
鈴木大地|1988年ソウル五輪金
鈴木大地選手は長い水中ドルフィンキックと、浮き上がり後の粘り強い水上ストロークで優勝しました。清川選手がIOC委員として鈴木選手へ金メダルを授与したことも、日本の背泳ぎ史を象徴する場面です。
入江陵介|美しい姿勢で世界と戦った
入江陵介選手は長年日本代表として100m・200mに出場し、2012年ロンドン五輪で200m銀、100m銅、4×100mメドレーリレー銀を獲得しました。水面でぶれの少ない姿勢とテンポは、多くのスイマーのお手本になりました。
歴史から今の練習へつなげる
- 仰向けでは頭を持ち上げず、水面へ預ける
- 左右の腕を交互に動かし、推進を途切れにくくする
- スタートはレッジの有無にかかわらず、両足で壁を押す
- 水中ドルフィンは距離より、浮き上がり後の速度まで見る
- スタートと各ターン後は15mまでに頭を水面へ出す
- ターンはうつ伏せへ回ってから連続して壁へ入る



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