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左右対称をやめると速くなる?トップスイマーが選ぶギャロップ泳法

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「左右対称に、きれいに泳ぐのが速いクロールの基本」――そう教わってきた方も多いのではないでしょうか。

でも、世界のトップスイマーの泳ぎを横から映した映像をよく見てみると、実は左右がきっちり同じリズムで動いているわけではないことに気づきます。意図的にリズムを左右でズラして泳ぐ「ギャロップ泳法」というスタイルが、長く・速く泳ぐための一つの選択肢として広まってきました。

この記事では、ギャロップ泳法の仕組みやメリット・注意点、向いているスイマーのタイプ、レース展開での使い分けまで、僕が整理して紹介します。

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ギャロップ泳法とは

ギャロップ泳法のイメージイラスト

ギャロップ泳法とは、一見すると普通のクロールに見えるものの、左右非対称のリズムで泳ぐクロールのことです。ストロークのタイミングが左右でわずかにズレていて、片側に「一瞬のタメ」が入るのが最大の特徴です。

泳ぎのリズムがポンポンっと跳ねるように見えることから、馬が駆ける「ギャロップ」という言葉が名前の由来になっています。英語圏では「ローピングフリースタイル」「ハイブリッドクロール」と呼ばれることもあります。

そして大事なポイントは、世界のトップスイマーの多くが、実際にこのスタイルで泳いでいるということです。フォームが乱れているのではなく、戦略的にリズムをズラしているのです。

なぜ「左右対称」が常識になっているのか

そもそも「クロールは左右対称で泳ぐもの」というイメージは、どこから来ているのでしょうか。

多くの方は、スイミングスクールや部活で、左右の腕を均等に回すこと・両側呼吸でバランスよく泳ぐことを最初に習います。これは決して間違いではありません。左右対称の動きは、軸を保ちやすく、初めて学ぶスイマーにとって最も再現しやすい泳ぎ方だからです。基礎を作る段階では、まずここを押さえることが大事です。

ただし、ある程度泳げるようになってきた段階では、「左右対称こそが速さの正解」とは限らないことが見えてきます。人間の体はそもそも完全な左右対称ではなく、利き腕・利き脚・呼吸のしやすい側があります。その違いを「ならして消す」のか、「活かす」のか。ギャロップ泳法は、後者の選択肢です。

体の左右差そのものについては、泳ぎに差が出る?筋肉の左右差が引き起こす問題とはでも詳しく整理しています。あわせて読んでみてください。

ギャロップ泳法の動き、何が違うのか

普通のクロールは、右と左の動きがほぼ同じタイミングで進む「左右対称」のリズムで泳ぎます。一方ギャロップ泳法は、そのタイミングをあえて少しズラすのが特徴です。

たとえば、右手を入水してキャッチ(かき始め)に入るタイミングで、左手はすでに水を押し終わって空中を戻っている、というような関係です。これに合わせて、体幹(お腹や背中まわり)もわずかに上下にうねるような動きになります。

特徴内容
キャッチの時間が長くなる利き手側でしっかり水をつかめる(深く長く)
呼吸が片側固定になることが多い安定感が出る代わりに、非対称な動きが生まれる
体幹が軽く上下する馬が走るような跳ねるリズムに見える
ストロークリズムが左右で違う長く・ゆっくり引く側と、速く・短く引く側がある

つまり、片側でじっくりパワーをかけて、もう片側はテンポよくリズムをつくるという組み合わせです。これがうまくはまると、スピードを落とさず、しかも無理なく長く泳ぎ続けられる状態に近づいていきます。

ちなみに、この泳ぎ方はキックとの相性も大事です。体幹が軽く上下するぶん、大きくバタバタ打つキックよりも、小さくしめたキックのほうが推進と効率のバランスを取りやすいと感じます。

ギャロップ泳法のメリット

「わざわざ左右の動きをズラす意味があるのか?」と思うかもしれません。ですが、トップスイマーがあえてこの泳ぎ方を選ぶには、しっかりとした理由があります。

メリット内容
① ストロークが深く長くなる利き腕側のキャッチに「タメ」ができ、水をしっかり後ろへ押し出せる。1ストロークで進む距離が伸びやすい
② 呼吸リズムが安定する片側呼吸が基本になるぶん、酸素の取り入れ方が安定し、持久力を保ちやすい
③ スピードと省エネのバランスがいいハイピッチに頼らずスピードを出せるため、体力の消耗が少なくなりやすい
④ レース展開に幅が出る中盤はじっくり進み、ラストでピッチを上げる…といったギアチェンジがしやすい

特に200mや400mといった中距離では、これらのメリットが効いてきます。長く・安定して・しかも速度を保って泳ぎ続けるための工夫として、ギャロップ泳法は一つの有力な選択肢になります。

ギャロップ泳法の注意点

見た目はかっこいいギャロップ泳法ですが、使いこなすにはクセがあります。土台が整わないまま見た目だけ真似してしまうと、逆に泳ぎがバラバラになってしまうこともあります。

注意点内容
① 左右差が目立ちやすい利き腕側に頼りすぎると、筋力バランスが崩れて肩や腰の負担が片側に寄りやすい
② フォームが乱れて見られやすい左右で動きが違うため、検定やフォームチェックでは意図が伝わらず誤解されることがある
③ 軸が不安定だと再現が難しい体幹の軸がブレると、リズムのズレがそのまま泳ぎの乱れになってしまう
④ 周囲が見えにくい場面がある呼吸が片側に固定されるため、屋外プールやオープンウォーターで波・対戦相手の位置を読みにくいことがある

特に大事なのは「自分に合うかどうか」です。ギャロップ泳法は、見た目だけ真似してもうまくいかないことが多いと感じます。まずは自分の泳ぎのベースが安定しているか、利き腕がどちらか、片側呼吸に違和感がないか…といったところを確認してから取り入れてみるのがおすすめです。

ギャロップ泳法が向いているスイマーのタイプ

ギャロップ泳法は、すべてのスイマーに合うわけではありません。これまで多くのスイマーを見てきた経験から、特に相性がいいと感じるタイプを整理しておきます。

向いているタイプ理由
中距離タイプ(200m〜400m)1ストロークでしっかり進めたい人と相性がいい。スタミナとスピードのバランスが必要な距離で力を発揮しやすい
左右で得意・不得意がある人利き腕のパワーを活かしやすい泳法。左右の筋力差がある人にはむしろメリットになりやすい
終盤にスパートをかけたい人中盤はギャロップでリズムよく進み、ラストで対称型に戻してピッチを上げる、というギアチェンジ戦略を取りやすい
片側呼吸が安定している人同じ側で呼吸し続けても泳ぎが乱れないタイプは、ギャロップとの相性がいい
パワー型・キックが強い人水面にしっかり乗って進めるタイプは、跳ねるような推進感を武器にしやすい

逆に、こんなタイプは少し工夫してから取り入れたほうがいいかもしれません。

  • 泳ぎの軸がまだ定まっていない、これから基礎を固めたいスイマー
  • 左右対称のフォームを軸に練習を進めている選手(検定や育成段階を重視している場合)
  • 波や外乱の中で左右の視界を使い分けたいオープンウォータースイマー

ギャロップ泳法は「スタイル」であって「正解」ではありません。全員が取り入れる必要はありませんが、「自分の特性を活かせそう」と感じたら、試してみる価値は十分にあります。

レース展開でのギャロップ泳法の使い方

ギャロップ泳法は、レース全体を通して使い続けるというよりも、場面に応じて使い分けるのが現実的です。特に200mや400mのレースでは、この切り替えが勝負を分けるポイントになることもあります。

レース展開に合わせた使い分け(200m自由形の例)

スタート直後(0〜15m)
  ↓
【高テンポ × 6ビートキック】で勢いよく浮上
→ ここでは対称型でスピード優先

  ↓
中盤(25〜150m付近)
  ↓
【ギャロップ泳法】に切り替えてリズムを整える
→ 呼吸も安定し、ストローク効率が上がりやすい

  ↓
終盤(ラスト50m)
  ↓
【再び対称型 + ハイピッチ】でスパート
→ テンポを上げて最後の勝負へ

このように、状況に合わせてギャロップ泳法と通常クロールを行き来することで、体力を温存しながら、ラストで爆発的なスピードに切り替えるといった使い方ができます。

「ラスト50mの伸び」が武器の選手にとって、ギャロップ泳法はその助走にもなるスタイルです。上のフローはあくまで一例で、自分の泳ぎ・距離・戦略に合わせて応用していくのがおすすめです。

よくある疑問

Q. ギャロップ泳法はフォームが崩れているということ?

A. いいえ、意図的にズラしている泳ぎ方です。

左右非対称な泳ぎは「下手に見える」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかしギャロップ泳法は、左右のテンポを意図的に変えて、利き手側のパワーを活かす戦略的な泳ぎ方です。崩れているのではなく、使い分けているということになります。

Q. 片側呼吸で泳いでいたらギャロップ泳法ということ?

A. 呼吸だけでは判定できません。

たしかにギャロップ泳法では片側呼吸が多くなりますが、片側呼吸イコールギャロップ泳法というわけではありません。左右のストロークにタイミングのズレがあるかどうかが、本質的な見分けポイントになります。

Q. マスターズスイマーやジュニアでも使ってもいい?

A. 使えます。ただし条件があります。

ギャロップ泳法は、ある程度基礎ができてから取り入れるのがちょうどいい泳ぎ方です。体幹が安定していること・片側呼吸に慣れていること・左右のフォームを自分で意識できること、このあたりが整っていれば、マスターズでもジュニアでも十分活用できます。

Q. 自分の泳ぎがギャロップになっているか分からない

A. ストロークの「左右差」に注目してみてください。

動画を撮って自分の泳ぎを横から見てみると分かりやすいです。片側の腕だけ、キャッチに入るまでの「間」が少し長いようなら、それはギャロップ寄りのリズムです。あえてそのリズムを活かす方向で練習を組み立てるのも、一つの選択肢になります。

まとめ

ギャロップ泳法は、左右対称のフォームにとらわれず、スピードと効率を両立させるための一つの選択肢です。

「左右をズラして泳ぐなんて変じゃない?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも、世界のトップスイマーたちはそのズレを「武器」に変えて泳いでいます。基礎がしっかりしていれば、ギャロップ泳法はあなたの泳ぎに新しい選択肢を加えてくれるはずです。

ただし、すべてをギャロップ泳法に置き換えれば速くなるというものでもありません。大切なのは、自分の身体や泳ぎ方に合っているかを見極めること。そのうえで賢く取り入れれば、レースで一歩リードする手がかりにもなります。

左右の違いを「ならして消す」のか、「活かす」のか。その視点を持って自分の泳ぎを見直してみると、これまで気づかなかった伸びしろが見えてくるかもしれません。

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