
「氷の中で泳ぐなんて正気の沙汰じゃないよね?」
そう思うのが普通です。でも、世界にはそんな“常識外れ”をあえて楽しむ人たちがいるんです。
寒い湖や凍った川に飛び込む「アイススイミング」は、ただの我慢大会ではありません。北欧では生活の一部として親しまれ、ロシアやスウェーデンでは本格的な国際大会も。さらには、日本でも地域の伝統行事として開催されている寒中水泳イベントもあるんですよ。
この記事では、世界の本格的なアイススイミングから、フィンランド流の楽しみ方、そして日本各地の寒中水泳イベントまで、さまざまな“氷の水泳文化”をご紹介します。
アイススイミングとは?
水温5℃以下の天然水域で行われる水泳競技または健康活動の総称です。
- 競技ルールはIISA(国際アイススイミング協会)やIWSA(国際冬泳協会)によって定められています。
- ウェットスーツは禁止、水着・キャップ・ゴーグルのみで泳ぎます。
公式大会では、最大1,000mの距離を泳ぐ種目も存在し、過酷な環境下での集中力・精神力が問われます。
フィンランドの冬の水泳文化「アヴァントウインティ」
フィンランドでは、冬の水泳を 「avantouinti(アヴァントウインティ)」と呼び、サウナとセットで行うのが一般的。湖や海に開けた氷の穴に入るこの体験は、ただの風習ではなく、心身のリセットや社交の場としても大切にされています。
体にいいの?冬の水泳の効果
複数の調査や体験者の声から、次のような効果が期待されています。
- 血行促進:寒さで血管が収縮・拡張を繰り返し、循環機能が刺激される
- ストレス軽減:「ストレスを水の中に置いてこれる」と感じる人が多い
- 睡眠の質向上:夜にぐっすり眠れるようになったという声も
- メンタルの回復:短時間の寒冷刺激で気分が晴れる(エンドルフィン・ドーパミン増加)
もちろん、心臓疾患や高血圧などがある人は慎重になるべきです。
フィンランド流:どうやって体験するの?
フィンランドでは、以下のようなステップで気軽に体験できます。
- サウナでしっかり身体を温める
- 氷の穴(avanto)へゆっくり移動
- 手すり付きの階段から慎重に水中へ
- 短時間(数十秒〜1分)で十分
- 再びサウナで温まってリカバリー
実際の施設では、公共セッションが定期開催されており、初心者でも安心して参加できる環境が整っています。1回数ユーロ程度のリーズナブルな料金で楽しめるスポットも多数あります。
必要な持ち物チェックリスト
- 水着(プライベート場所以外は必須)
- サウナハットやビーニー
- ネオプレン製の手袋やシューズ(寒冷対策)
- タオルと暖かい着替え
- 水分補給用のドリンク
なぜわざわざこんなことを?
一見「ドMな遊び」に見えるかもしれませんが、多くの人にとってアイススイミングは生活の一部です。
「水に入ると一度、すべての思考が止まる」
「体の芯から目が覚める感じ」
など、現代人が求めている“リセット感”を全身で体感できるからです。
こんな大会もある!世界の“ガチ”なアイススイミングレース
アイススイミングには、ただの寒中チャレンジを超えた“本気の大会”も存在します。
中でも注目されているのが、ロシアや北欧で開催される極寒レースです。
■ アイススイミング・ワールドチャンピオンシップ(ロシア・ムルマンスク)
過去には北極圏に位置するロシアのムルマンスクで、分厚く張った氷を切り開いて作った全長1kmのコースを泳ぐ世界大会が開催されました。
その水温はなんと-0.5℃という過酷な環境の中、選手たちは身体の自然な反応(過換気や硬直)と闘いながら泳ぎ切ります。
■ スカンジナビア冬季水泳チャンピオンシップ(スウェーデン)
スウェーデンのラップランド地方・シェレフテオで開催されるこの大会も有名です。
競技種目は25mリレー、50m自由形、200m自由形など多岐にわたり、16カ国以上から300人近い参加者が集まる国際色豊かなイベントです。
もちろんルールも細かく定められており、たとえばフライングには「5秒加算ペナルティ」などユニークな規定も。もちろん、ウェットスーツは禁止で競泳用スイムウェアのみが許可されているという“ガチ仕様”。
こうした大会を見ると、「ただ寒いだけじゃない」「命がけの真剣勝負なんだ」と実感しますよね。ちなみに、どちらの大会も救助チームや医師が常駐しており、選手の安全対策もしっかり整備されています。
実は日本にもある!寒中水泳イベント、参加してみない?
アイススイミングと聞くと、海外の過酷な大会を思い浮かべがちですが、実は日本でも冬ならではの寒中水泳イベントが各地で開催されています。初心者向けの短距離コースや、あたたかい食べ物のふるまいなども用意されていて、思ったよりもハードルは低め。興味がある人は、まずは雰囲気を楽しむところから始めてみるのもいいかもしれません。
ここでは、日本各地で開催されている寒中水泳イベントの一部をご紹介します。
■ おとがわ寒中水泳(愛知・岡崎市)
戦後間もない1949年から続く伝統あるイベント。近年は「豚汁のふるまい」や「足湯コーナー」、「特製タオルのプレゼント」などもあり、家族で楽しめる雰囲気が魅力です。対象は10歳以上、コースは20mと120mから選べます。
■ WINTER SWIMMING in KAIKE(鳥取・米子市)
日本海に面した皆生温泉の海で泳ぐ新春恒例のイベント。仮装OK、即席の温泉露天風呂あり、抽選会ありと、まさに「クレイジーで楽しい」寒中水泳。新成人は参加無料で、旅の思い出にもぴったり!
■ 相模川寒中水泳大会(神奈川・相模原市)
元旦に行われる県内有数の伝統行事。水難事故防止と健康祈願を目的に、小中学生から一般まで幅広く参加可能。60年以上続く歴史あるイベントで、地域密着型の温かさが感じられます。
寒中水泳といっても、競技ではなく文化や行事としての参加が中心なので、競技用のガチ水着も不要。あたたかい服や防寒グッズだけ準備すればOKです。
「ちょっと体験してみたいかも…」と思った方、来年はぜひ最寄りの寒中水泳イベントをチェックしてみてくださいね!冷たい水に入った後の温かいスープが、きっと忘れられない味になりますよ 🍲
まとめ
アイススイミングや寒中水泳は、単なるチャレンジを超えて、人間の自然への適応力や心身のリセット感を実感できるアクティビティです。フィンランドのように文化として根付いた国もあれば、ロシアやスウェーデンのように本格的な大会として行われている例もあります。
そして実は、日本でも各地で寒中水泳イベントが開催されており、家族や地域のつながりを大切にしながら健康を願う行事として親しまれています。
氷点下の水温に飛び込むのは少し勇気がいるかもしれませんが、終わったあとの達成感や、身体の芯から湧いてくるエネルギーは格別。海外旅行で本格的なアイススイミングに挑戦してみるのも良し、まずは地元のイベントから体験してみるのもアリです。
「ちょっと冷たい水に入ってみるか」なんて気持ちが、あなたの冬を一味違うものに変えてくれるかもしれませんよ。
コメント