
マスターズスイマーが競技力を向上させるためには、適切な運動量だけでなく、運動強度を戦略的に設定することが重要です。運動強度を意識した練習計画は、効率的なパフォーマンス向上と怪我の予防に役立ちます。
本記事では、運動強度の簡易計算法と、強度ごとの適切なメニュー配分について解説します。
1. 運動強度の簡易計算法
① RPE(主観的運動強度)の活用
RPE(Rate of Perceived Exertion)は、運動のきつさを0~10のスケールで評価する方法です。スイマーは以下の目安を参考に、自身の練習強度を把握しましょう。
RPEスケール | 運動強度 | 感覚の目安 |
---|---|---|
0 | 完全休息 | 何もしていない状態 |
1~2 | ごく軽い運動 | 軽いストレッチ、ウォームアップ |
3~4 | 軽い運動 | 会話が容易にできる程度 |
5~6 | 中等度の運動 | 軽く息が弾むが会話可能 |
7~8 | 高強度の運動 | 息が弾み、短い会話が可能 |
9~10 | 全力運動 | 会話が不可能、限界の状態 |
② 心拍数を用いた運動強度の計算
運動中の目標心拍数を計算することで、客観的に強度を設定できます。
- 最大心拍数の計算:
220 – 年齢 (例: 40歳の場合、最大心拍数は180) - 目標心拍数の範囲(%最大心拍数):
- 低強度(50~60%): リラックスした運動
- 中強度(60~80%): 持久力を高める運動
- 高強度(80~95%): 心肺機能とスピード向上を狙う運動
2. 運動強度ごとの効果と配分
① 低強度(RPE 2~4 / 最大心拍数50~60%)
- 目的: 回復、技術の習得、ウォームアップ
- 練習全体に占める割合:
- 初級者: 60~70%
- 中級者: 50~60%
- 上級者: 40~50%
- 練習例: 軽いスイムやストローク改善を意識したゆっくりした泳ぎ
② 中強度(RPE 5~6 / 最大心拍数60~80%)
- 目的: 持久力と心肺機能の向上
- 練習全体に占める割合:
- 初級者: 20~30%
- 中級者: 30~40%
- 上級者: 30~40%
- 練習例: 長距離を一定のペースで泳ぐ有酸素運動
③ 高強度(RPE 7~9 / 最大心拍数80~95%)
- 目的: スピードやパワーの向上、レースペースの強化
- 練習全体に占める割合:
- 初級者: 5~10%
- 中級者: 10~20%
- 上級者: 20~30%
- 練習例: レースペースでのインターバル練習や短距離スプリント
3. レベル別運動量の配分
① 初級者(RPE 2~6が中心)
- 運動量: 1回あたり 1000~2000m
- 週の練習回数: 2~3回
- 配分例:
- 低強度: 60~70%(600~1400m)
- 中強度: 20~30%(200~600m)
- 高強度: 5~10%(100~200m)
② 中級者(RPE 4~8が中心)
- 運動量: 1回あたり 2000~4000m
- 週の練習回数: 3~5回
- 配分例:
- 低強度: 50~60%(1000~2400m)
- 中強度: 30~40%(600~1600m)
- 高強度: 10~20%(200~800m)
③ 上級者(RPE 5~10が中心)
- 運動量: 1回あたり 4000~6000m
- 週の練習回数: 5~7回
- 配分例:
- 低強度: 40~50%(1600~3000m)
- 中強度: 30~40%(1200~2400m)
- 高強度: 20~30%(800~1800m)
4. レース距離別の練習目安
① 短距離レース(50m・100m)
- 目標配分:
- 高強度: 30~40%
- 中強度: 30~40%
- 低強度: 20~30%
- 週の練習総距離:
- 初級者: 3000~5000m
- 中級者: 5000~10,000m
- 上級者: 10,000~15,000m
② 中距離レース(200m・400m)
- 目標配分:
- 高強度: 20~30%
- 中強度: 40~50%
- 低強度: 20~30%
- 週の練習総距離:
- 初級者: 4000~6000m
- 中級者: 6000~12,000m
- 上級者: 12,000~18,000m
③ 長距離レース(800m・1500m)
- 目標配分:
- 高強度: 10~20%
- 中強度: 50~60%
- 低強度: 30~40%
- 週の練習総距離:
- 初級者: 5000~7000m
- 中級者: 7000~14,000m
- 上級者: 14,000~20,000m
5. まとめ
マスターズスイマーの競技力向上には、運動強度を明確に設定し、目標に応じた練習量と強度のバランスを保つことが重要です。
- RPEや心拍数を用いて強度を管理する
- レベル別・レース距離別に最適な運動量を設定する
- 練習メニューをバランスよく配分し、効率的なトレーニングを行う
自身の体力や競技レベルを考慮しながら練習計画を立て、強度別の配分を意識することで、効率的に成果を上げることができます。継続的な練習と調整を重ねながら、目標に向かって挑戦を続けましょう!

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