
乳酸は、運動中や激しいトレーニングでよく耳にする言葉ですが、その役割や影響について誤解されることが少なくありません。
「乳酸=疲労の原因」「乳酸が溜まると筋肉痛になる」などのイメージを持っている方も多いですが、実は乳酸は運動において重要な役割を果たすエネルギー源でもあります。
本記事では、乳酸の正しい知識を科学的な視点から分かりやすく解説し、競技力向上に役立てる方法を紹介します。
1. 乳酸とは何か
① 乳酸の基本的な定義
- 乳酸(Lactic Acid) は、体内でエネルギーを作り出す過程で生成される物質。
- 運動中にエネルギーが急速に必要になると、グルコースが解糖系という経路で分解され、この過程で乳酸が生じる。
② エネルギー産生と乳酸の関係
- 体内には有酸素運動と無酸素運動の2つのエネルギー供給系がある。
- 有酸素運動: 酸素を利用して効率的にエネルギーを産生(持久力向上に貢献)
- 無酸素運動: 酸素が不足する場合に短期間でエネルギーを生産。ここで乳酸が生成される。
- 乳酸はエネルギー産生の「副産物」ではなく、むしろ体内でエネルギー源として再利用される。
2. 乳酸に関する誤解と真実
① 「乳酸=疲労物質」ではない
- かつては「乳酸が溜まると疲労が増す」と考えられていましたが、これは誤解。
- 現代の研究では、乳酸はむしろエネルギー供給や回復に寄与することが分かっています。
- 乳酸は肝臓でグルコースに再合成され、再びエネルギーとして利用される(コリ回路)。
② 「運動後の筋肉痛の原因」ではない
- 運動後の筋肉痛(遅発性筋肉痛: DOMS)は、乳酸ではなく筋繊維の微細な損傷が原因。
- 乳酸は運動後数時間以内に代謝されるため、筋肉痛とは無関係。
3. 乳酸が体に及ぼすプラスの効果
① 乳酸はエネルギー源として利用される
- 筋肉、心臓、脳などの主要なエネルギー供給源として活用される。
- 乳酸がうまく活用されると、疲労を遅らせ、持久力を向上させることができる。
② 乳酸はトレーニング効果を高める
- 高強度運動時に乳酸が多く生成される状況は、体の乳酸処理能力を向上させる。
- 乳酸を効率よく再利用できるようになると、持久力や運動効率が向上。
4. 乳酸と運動強度の関係
① 乳酸閾値(LT: Lactate Threshold)とは
- 乳酸閾値とは、運動中に乳酸が急激に増加するポイント。
- 乳酸閾値を超える運動強度では、乳酸が急激に蓄積する。
- 有酸素運動: 乳酸が速やかに代謝され、蓄積しない。
- 無酸素運動: 乳酸の生成が代謝を上回り、蓄積が始まる。
- 乳酸閾値を向上させることで、より高い強度で長く運動できるようになる。
② 乳酸の蓄積とパフォーマンス
- 高強度運動では乳酸が蓄積すると筋肉内の酸性度が増し、パフォーマンスが低下。
- しかし、乳酸を速やかに代謝する能力を高めることで、より高い運動強度を維持できる。
5. 乳酸を効果的に活用する方法
① 持久力トレーニング
- 持久力トレーニングは、乳酸を効率的に代謝する能力を向上させる。
- 長時間の有酸素運動を取り入れることで、乳酸処理能力を強化。
- 乳酸閾値付近の運動を行うことで、乳酸耐性が向上。
② インターバルトレーニング
- 高強度の運動と休息を交互に行うことで、乳酸閾値を高める効果がある。
- 例: 全力で1分間泳ぎ、1分間休憩を繰り返す。
③ アクティブリカバリー
- 運動後に軽い運動(ウォーキングや軽いスイム)を行うことで、乳酸が速やかに代謝され、疲労回復を促進。
- 例: 高強度運動後にRPE 3~4の軽い運動を10~20分行う。
6. 乳酸についてのよくある質問
① 乳酸を溜めすぎると体に悪い
- 一時的な乳酸蓄積は体に害を与えません。
- むしろ適度な乳酸蓄積はトレーニング効果を高める要因となります。
② 乳酸の処理能力を測定する方法は
- 乳酸閾値テスト:
- 専門施設で心拍数や血中乳酸濃度を測定し、乳酸閾値を確認できます。
7. まとめ
- 乳酸は疲労や筋肉痛の原因ではなく、エネルギー供給やトレーニング効果を高める重要な物質。
- 乳酸をうまく利用することで、持久力向上や競技パフォーマンスの改善が可能。
- 乳酸閾値を高めるトレーニング(持久力トレーニングやインターバル練習)を取り入れることが鍵。
- 乳酸を味方につけて、より効果的な運動習慣を取り入れていきましょう!
乳酸を正しく理解し、トレーニングに活用することで、競技力向上や持久力の向上を図ることができます。今後の練習にぜひ取り入れてみてください!
運動強度について詳しく知りたい方はこちらを参考にしてください
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