
コーチ、私は筋トレはやらない主義でしてね。ムキムキになると体が重くなって泳ぎが遅くなる。若い頃からそう教わってきましたから。

よく聞く話ですね。研究では、筋トレを水泳練習へ適切に組み合わせると、特に短距離の成績を改善する可能性が示されています。ただし、やれば全員速くなるという話ではありません。

否定…? 筋肉をつけたら重くなるのは、当たり前でしょう。重くなれば水に沈む、そう思いますがね。

「重くなる=遅くなる」とは限らないんです。今日は思い込みと研究を、正面から突き合わせてみましょう。
先に結論
筋トレは「泳ぐ代わり」ではなく、泳ぎへ移せる力を作る補助
- 期待しやすい:短距離、スタート、ターン、筋力不足が課題
- 効果が薄くなりやすい:水中技術と無関係な種目を増やすだけ
- 調整が必要:筋肉痛で重要な水泳練習の質が落ちる
研究が言っていること
複数の研究をまとめた報告では、水泳と筋力トレーニングを組み合わせた群で、泳ぐだけの群より成績が改善する傾向が示されています。効果は短距離・スタート・ターンで見られますが、研究の方法や対象はさまざまです。
22人の男子競泳選手を対象にした9週間のRCTでは、陸上と水中の抵抗トレーニングを組み合わせた群で、筋力とスプリント指標が改善しました。単一研究の結果なので、年齢や性別が違う人へ同じ数字を約束するものではありません。
一方、レビューでは「どの方法が最良か」までは一致していません。筋トレそのものより、泳ぎの課題へどう結びつけ、疲労をどう管理するかが重要です。

ふむ…。しかし、なぜ重くなりそうなのに、かえって速くなるんですか? そこが腑に落ちませんよ。

いい質問です。理由は大きく3つ。狙いが”体を大きくすること”ではないからなんです。
なぜ速くなる? 3つの理由
1つ目は水を押す力を高める土台。2つ目はスタート台とターンでの力発揮です。陸上で鍛えたら、プールで水中姿勢とタイミングまでつなげます。
短距離ほどスタート・ターンの比重は大きくなります。3つ目は高い力発揮を繰り返す能力ですが、後半のフォーム維持には持久力と技術練習も必要です。

なるほど、スタートとターンは確かに力が要りそうだ。あそこで置いていかれる感覚はありますよ。

そこは陸上筋トレの成果を測りやすい局面です。ジャンプやスクワットの伸びだけでなく、5m・15m通過やターン後のタイムで水中への転移を確認しましょう。
「重くて抵抗が増える」心配は、当たっている面もある
水の抵抗は、体重だけでなく、姿勢、前面投影面積、速度、技術で変わります。体重や体格の変化と一緒に、水中姿勢とタイムを確認しましょう。
競泳では筋力・パワー・傷害予防など目的を先に決め、必要な種目と量へ絞ります。筋肥大が目的でない時も、負荷と食事によって筋量は変化します。
体重、泳タイム、スタート・ターン、肩の状態を同時に記録し、実際にプラスかを判断します。

大きくするのが目的ではない、と。そこを勘違いしていました。
| 確認項目 | 4〜8週間で見る指標 | 調整 |
|---|---|---|
| 泳ぎへの転移 | 25・50m、5・15m、ターン後タイム | 陸の重量だけ伸びても泳ぎが変わらなければ種目を見直す |
| 疲労 | 水泳練習の質、筋肉痛、睡眠 | 重要練習の前は量を減らす |
| 体格 | 体重だけでなく体調・泳姿勢 | 増減を目的とせず競技指標と一緒に見る |
| 可動域・痛み | ストリームライン、肩・腰・膝 | 痛みのある動作は中止して専門家へ |

私が信じていたことと、ほぼ真逆ではありませんか…。ボディビルのイメージが強すぎたのかもしれません。
ただし”やり方”が条件
とはいえ、ただ重いものを持ち上げるだけでは泳ぎに活きにくい、という研究もあります。カギは泳ぎの動きと結びつけること。
やみくもに大きくするのを狙うと、シゲさんの心配どおり抵抗が増える面も出てくるので、“大きくする”より”泳ぎに使える力”を狙うのが肝心です。

では、具体的には何から始めればいいんでしょう。
開始時の注意
初回から限界重量を試さない
週1〜2回、主要動作を少量から始め、翌日の水泳が崩れない範囲で増やします。鋭い痛み、胸痛、めまい、強い息切れがあれば中止してください。
どう始める|フォーム優先・軽い負荷から
- 重い肥大狙いではなく、自重や軽い負荷から段階的に
- フォーム(動きの質)を最優先。回数や重さは後回し
- 引く(斜め懸垂)・押す(腕立て)・体幹(プランク)・キックの土台を泳ぎと結びつけて
- 頻度は週1〜2回から。泳ぎ込みの合間に少しずつ

私のような中高年でも、やって大丈夫なものですか?

中高年は軽い負荷から始め、運動後の疲れ方を見ながら増やします。関節の痛みや持病がある、運動中に胸痛・めまいが出る場合は、始める前に医療職や指導者へ相談してください。
ついでに|こんな誤解も、もう古い
「筋トレをすると体が硬くなって泳ぎがぎこちなくなる」——これも適切な範囲なら当てはまりません。
十分な可動域で行う筋力トレーニングは、健康な成人の関節可動域を改善したメタ解析があります。ただし種目・フォーム・痛みで結果は変わるため、「必ず硬くならない」とも断定しません。

いや、目からうろこでした。思い込みで長年、損をしていましたよ。今日から少しずつ、始めてみます。

その柔軟さが一番の武器です! 無理のない範囲で、一緒にやっていきましょう。
まとめ
- 「筋トレで重く・遅くなる」は研究では支持されていない
- 速くなる理由は押す力・スタート/ターンの爆発力・後半の維持力
- カギは大きくするより”泳ぎに使える力”。フォーム優先・軽い負荷から・泳ぎと結ぶ
- “筋トレで硬くなる”も思い込み。持病があれば専門家に相談を
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