「腕を回しているのに進まない」「水をつかめていない気がする」という子に向けて、家でできる陸トレを紹介します。プルは腕力だけでなく、手と前腕の向き、体の姿勢、肩まわりの動き、タイミングが組み合わさって変わります。
陸上のチューブ運動は筋力や動作を練習する補助であり、水の感覚をそのまま再現するものではありません。家では軽い負荷、水中では意識を一つに絞って確認しましょう。
まず結論|プルは「腕力」より「土台」
- 進みにくい原因は腕力不足だけではなく、手と前腕の向き、ひじの位置、姿勢、タイミングなど複数あります
- ゴムチューブは動きと筋力を練習する道具。水の抵抗や感覚を完全には再現できず、負荷が強いと肩に負担がかかります
- 目安は週2回から。軽い準備運動→2〜4種目→無理のない整理運動の順で行います
- 肩の痛み、引っかかり、しびれが出たら中止。回数を減らして続けず、必要に応じて医療機関へ相談します
最初に水中で「手が滑る」「ひじが落ちる」「体がぶれる」のどれか一つを見つけましょう。
ここから、ひとつずつ詳しく見ていきますね。
なぜプルが弱い?
プルは大きく「①水を前で掴む(キャッチ)→②体の下へ引く(プル)→③後ろへ押す(プッシュ)」と進みます。
大切なのは、手のひらだけでなく前腕も使って水を後方へ押すことです。「ハイエルボー」はひじを無理に高く固定する意味ではなく、肩をすくめず、手と前腕を進行方向に対して使いやすい向きに整えるための目安です。
手が体の下を急いで通る、肩がすくむ、体が左右にぶれる場合は、水を後方へ押す時間が短くなりやすいです。
つまりプルの土台は
①手と前腕の向きを整える動作
②肩まわりと背中を無理なく使う力
③姿勢を保つ体幹
家トレで動きと姿勢を練習したら、水中ではスカーリングや短い距離で一つずつ確かめます。
技術そのもの(ハイエルボーの作り方や失敗の直し方)は水泳のプル(pull)とはでくわしく解説しています。
コーチ視点のポイント
筋力を鍛える前に、水をつかむ位置と姿勢を見る
入水直後に手を急いで動かす、呼吸で体が横へ逃げる、手のひらだけで押そうとする場合にも水は抜けます。陸トレを増やす前に、水中で起きていることを一つ選びましょう。
まず見るべき「弱さのタイプ」
プルが弱いとき、原因はだいたいこの5つに分かれます。
水中での見え方から、家トレで狙う場所を決めましょう。
| 弱さのタイプ | 水中での見え方 | 家トレで狙うこと |
|---|---|---|
| 肘が落ちる(ドロップエルボー) | 手だけが先に下がる | 肩甲骨・肩の安定+バンドで正しい軌道 |
| 背中を使えない | 腕だけでかいてすぐ疲れる | 広背筋(ラットプル・ロー) |
| 力が逃げる | 体がブレて進まない | 体幹(プランク) |
| 掴む前にかき始める | 水をつかめず滑る | バンドで「前で掴む」の再現 |
| 握り・前腕が弱い | 水をこぼす感じ | グリップ・前腕 |
家でできる陸トレ(週2〜3回)
肩と器具の安全確認
チューブの固定部・亀裂・周囲の人を確認し、顔の方向へ戻る位置では引かない
痛み、引っかかり、しびれ、力が抜ける感覚がある場合は中止します。成長期の運動は軽い負荷と正しい技術を優先し、家庭用器具は製品の対象年齢と固定方法を守って大人が見守ってください。
※はじめに:プルの陸トレは肩を使うので、軽い負荷・正しいフォーム・大人の見守りが大前提です。
重い懸垂や反動をつけた動きは、成長期の肩には負担が大きすぎます。
子どものレジスタンス運動は、正しいフォームと十分な監督のもとで・軽めの負荷で・ウォームアップとクールダウンを添えて行うのが安全とされています。
肩は水泳で痛めやすい場所なので(水泳肩について)、「数」より「形」を優先し、痛みが出たらすぐ中止してください。
1. ゴムチューブでプル(キャッチ〜プッシュの再現)

目的:手と前腕で後方へ押す動作の確認
やり方:専用アンカーなどでチューブを確実に固定し、引く前に外れないか大人が確認します。軽い負荷で、肩をすくめずゆっくり引きます。
目安:左右8〜12回 × 1〜2セット
見るポイント:ひじを無理に高く固定せず、肩の前側に痛みがない範囲で。詳しい使い方はストレッチコードの使い方もどうぞ。
2. バンド・ラットプルダウン

目的:腕と背中を協調させて引く
やり方:チューブを頭上の安全な位置に固定し、肩をすくめない範囲で両手を下へ引きます。
目安:8〜12回 × 1〜2セット
見るポイント:腰を反って重い負荷を動かさない。固定部が不安定ならこの種目は行いません。
3. シングルアーム・ロー(片手ローイング)

目的:片側ずつ背中を使う力
やり方:ペットボトルを片手で持ち、肘を後ろへ引きます。背中を使って引き、ゆっくり戻す。
目安:左右10回 × 2セット
見るポイント:体をひねって反動で引かない。左右差のチェックにもなります。
4. 肩の外旋(ローテーターカフ)

目的:肩の外旋筋を軽い負荷で動かす
やり方:タオルを脇にはさみ、ひじを体の横につけたままチューブを外へ開きます。
目安:左右8〜12回 × 1〜2セット
見るポイント:痛みのない小さな範囲で、肩をすくめずに行います。
5. プランク

目的:力を逃さない体幹
やり方:うつ伏せで肘つきプランク。頭を上げず、お腹を薄く、お尻を軽く締める。
目安:20〜30秒 × 3セット
見るポイント:プルの力は体幹を通して伝わります。腰が反ったら失敗。
6. グリップ(タオル絞り・ボール握り)

目的:手や前腕を軽く動かす補助運動
やり方:やわらかいボールを軽く握って戻します。
目安:10回 × 1〜2セット
見るポイント:指や手首に力を入れすぎず、動かしやすい範囲で行います。水中では手のひらと前腕の向きを別に確認します。
番外編. 斜め懸垂(または補助つき懸垂)

目的:体を一直線に保ちながら引く
やり方:高さと強度を調整でき、安全が確認された設備で斜め懸垂を行います。
目安:5〜8回 × 1〜2セット
見るポイント:肩に痛みが出たら中止します。遊具の利用ルールを守り、大人がそばで見守ります。
家庭用の懸垂器具は必須ではありません。使用する場合は、対象年齢、耐荷重、床の水平、転倒防止方法を製品説明で確認し、子どもだけで使わせないでください。ドア枠式や不安定な家具で代用しないようにします。
メニュー例
週2〜3回メニュー
| メニュー | 種目 | 目安 |
|---|---|---|
| A:動作と姿勢 | 軽い準備運動/チューブプル/プランク | 各1〜2セット、約6〜8分 |
| B:背中と肩 | ローイング/軽い肩外旋/プランク | 各1〜2セット、約6〜8分 |
最初はAかBのどちらか一方を選びます。肩の外旋を含め、痛みのない範囲でフォームを保てる種目だけを行います。
短時間メニュー(週2回から)
- ゴムチューブでプル:左右10回
- 肩の外旋:左右15回
- プランク:30秒×2
- グリップ:15回
避けたい練習
| 避けたい例 | 理由 |
|---|---|
| 重い懸垂を無理に | 成長期の肩に負担・フォームが崩れる |
| 反動でチューブを引く | 肩を痛めやすく、広背筋にも効かない |
| ドロップエルボーのまま数だけ | 悪い軌道(肘落ち)が固定される |
| 痛みを我慢して続ける | 水泳肩(スイマーズショルダー)のリスク |
| 「もっと強くかけ」だけの指導 | 腕力に頼るクセがつく。狙いは”面で掴んで背中で引く” |
伝え方のコツは「もっと強く」ではなく「前で面をつくって、背中で引く」。
腕力ではなく、掴む位置と引く筋肉が問題です。
水中へのつなげ方(チェックポイント)
家トレをしたら、水中ではここを見ます。
- 体の前で水を掴んでから引き始めているか
- 掴むとき肘が落ちていないか(ハイエルボー)
- 腕だけでなく背中で引けているか
- スカーリングで水を”面”で感じられるか
- 左右で引きの強さに差がないか
評価は25mを何ストロークで進むか(ストローク数)がおすすめ。
プルが効くほど、同じ距離を少ないストロークで進めるようになります。
声かけのコツ
小学生には理屈より、短い言葉が効きます。
- 「肩をすくめず、前腕で後ろへ押そう」
- 「急いで手を後ろへ抜かない」
- 「体をぶらさず、ゆっくり押そう」
- 「手のひらは面で押す」
- 「反動を使わない」
一度に全部言わず、水中で起きていることに合わせて一つだけ伝えます。本人が「どこに水を感じたか」を聞くと、次の修正につながります。
まとめ
- 前で水を掴む(ハイエルボー)の土台=肩甲骨・肩の安定
- 引く力=広背筋(チューブ・ラットプル・ロー)
- 力を逃さない体幹
- 肩を守る外旋(ローテーターカフ)
- 水をこぼさないグリップ
家トレでは、水中で使う動きと姿勢を軽い負荷で練習します。そのあとプールで、手と前腕に水を感じられる位置を確かめましょう。
まずは週2回、2〜4種目から始めます。水泳練習で肩が疲れている日や、痛み・引っかかり・しびれがある日は行いません。
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お子さんのプルを一度見てほしい、練習の組み立てを相談したいという方は、プライベートレッスンでもご相談いただけます。



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