「昔は倒れるまで泳がされたもんだ」——そう言い切る人は今も少なくありません。ところが子ども、とくに小学生の体は、大人とは違う仕組みで伸びていきます。今日はシゲさんの持論から話が始まりました。

コーチ、孫の練習を見てるとどうも物足りなくてね。私らの時代は、キツいのを歯を食いしばってやってナンボでしたよ。もっと追い込ませた方が速くなるでしょう。

お孫さんを応援したいお気持ち、すごく伝わってきますよ。ただ、その『追い込んでナンボ』は、大人にはあてはまっても、子どもだと少し事情が変わるんです。

事情が変わる? 苦しい練習を乗り越えてこそ強くなる、それは昔も今も同じでしょう。

そこなんです。『高強度が全部ダメ』ではなくて、子どもに合う強度の種類があるんですよ。まず結論からお話ししますね。
まず結論|子どもは「短く速く・技術・楽しさ」で伸びる
- 子どもは「長くキツい追い込み」より「短く速い動き・技術・楽しさ」で伸びやすいとされる
- 高強度が全部ダメなのではなく、強度の「種類」が大事
- 乳酸をためる長い反復は子どもには効率が良くないと言われる
- 短い全力+しっかりした休み、神経系・スピード・技術を使う動きは子どもにも有効
子どもは「長くキツい追い込み」より、「短く速い動き・技術・楽しさ」で伸びる。高強度が全部ダメなのではなく、種類が大事です。

追い込ませるのが一番じゃない…? 『種類が大事』というのが、どうもピンとこないんですが。
息が上がってキツくなる『追い込み』の正体のひとつは、糖を一気にエネルギーへ変えて乳酸がたまっていく状態です。この仕組みが子どもと大人で差が出ます。

じつは小学生くらいだと、この『糖を一気に使う仕組み——解糖系と呼ばれます』が、大人ほど発達していないとされているんです。

じゃあ、私らが若い頃やったのと同じキツい反復を孫にやらせても…?

同じだけ苦しい思いをさせても、大人ほど見返りは大きくない、というイメージなんですよ。体の仕組みとして『まだその時期じゃない』と考えると分かりやすいです。

むむ…。じゃあ子どもには、高い強度はさせちゃいかんということですか。それはそれで極端な気もしますが。

いい引っかかり方です。『一切ダメ』ではないんですよ。同じ『速い・キツい』でも、子どもに合った形がある。表で見比べてみましょう。
| 同じ「速い・キツい」でも | 中身 | 子どもとの相性 |
|---|---|---|
| 大人型の追い込み | 乳酸をためる長い反復をひたすら続ける | 効率が良いとは言えない |
| 子ども向きの形 | 短い全力+しっかり休む/神経系・スピード・技術 | 取り組みやすく有効とされる |
では何をすれば伸びる?
子どもの時期に効果的とされる動きは、大きく次の3つです。「たくさん泳ぐ」より「どんな動きを身につけたか」が軸になります。
| 伸ばす柱 | 具体的にどんな動き | なぜ子どもに向く |
|---|---|---|
| 短い全力+しっかり休む | 数秒〜十数秒の速い泳ぎを、息が整うまで休んでまた行う | 乳酸をためこむ前に回復できる |
| 神経系・スピード・タイミング | 速く動く・リズムよく動く「動きの質」を高める | 成長期は神経が伸びやすい時期 |
| 技術・多様な泳ぎ | 4種目やドリル、いろいろな動きを経験する | 動きの引き出しが増える |

速い泳ぎでも、しっかり休めば子どもに向くと。私はてっきり、量をこなした者が勝つと思い込んでいましたよ。

いわゆる『ゴールデンエイジ』と呼ばれる成長期は、量より、スピード・技術・多様な動きを優先する方が効果的とされているんです。
やりすぎの注意点
長くてキツい追い込みや過度な練習量には、知っておきたいリスクもあります。体への負担が大きすぎると故障につながりやすく、心の面でも『燃え尽き』や『水泳ぎらい』のきっかけになることがあると言われています。

それは困る。好きで始めた水泳を嫌いになったら、元も子もないですね…いや、本当にもったいない。

本末転倒ですよね。長く続けて伸びる子ほど、楽しさと多様な動きを大事にしている、という見方もあります。『もっと追い込ませたい』と感じたときこそ、いったん立ち止まる目安にしてみてください。

では、チームの練習がキツそうに見えたら、コーチに『少し抑えてください』と言った方がいいんでしょうか。私は言いたくなる質でしてね。

ここは補っておきたいんですが、練習の中身はコーチに任せるのが基本なんです。一見キツそうでも、その日その時期のねらいがあって組まれていることが多いんですよ。

ですので内容に口を出すより、家庭でできるサポートに寄せるのがおすすめです。ただ、もし痛みを訴えるなど気になる様子があれば、無理をさせず医療機関に相談してくださいね。
保護者・家族ができること

練習はお任せして…では、家でできることというと、どんなことがありますか。
- 睡眠を整える…成果が定着するのは休んでいる時間。早く眠れる環境が土台
- 栄養を支える…しっかり食べる。練習量より毎日の食事の積み重ねが効く
- 楽しさを守る…「速くなった?」より「今日どうだった?」。できた動きや楽しかったことに目を向ける
- 比べすぎない…成長のペースは個人差が大きい。他の子や過去のタイムと比べすぎない

『今日どうだった?』ですか…。私はつい『タイムは縮んだか』ばかり聞いていましたよ。昔の癖が抜けん。

みなさんやりがちなんですよ。『追い込ませること』が役目のように感じますが、子どもの時期は休む・食べる・楽しむを支えることが、いちばん効く応援だと僕は思っています。

なるほど、目からウロコです。やきもきする代わりに、睡眠とごはんと『楽しさ』を守ることから始めてみますよ。

その姿勢が、お孫さんが長く水泳を好きでいられる一番の力になりますよ。焦らず、その子のペースを一緒に応援していきましょうね。



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